「トヨタよ、お前もか!」相次ぐ不正、豊田章男会長ら「ルール見直し」提起の必然
そして問題の根底にあるのは、試験の多くがメーカー自ら実施することになっており、“独自解釈”を招く余地があることだ。いわば「企業任せ」の構造があり、これが不正行為などの遠因ともなったといえる。 ● 認証制度の見直し議論が 本質的な打開策に そうなると、「絶対、やってはいけないこと」と悔やんで謝罪したトヨタ・豊田会長が一方で認証制度の改善を訴えたように、これを機に型式指定の認証制度を見直す議論が今後の本質的な打開策につながるといえるだろう。 監督官庁の国交省は、旧運輸省時代から自動車の安全・環境行政を司っており、認証は物流・自動車局の審査・リコール課などが担当している。斉藤鉄夫国交相は5社の認証不正に対し、「自動車ユーザーの信頼を損ない、自動車認証制度の根幹を揺るがす行為であり、極めて遺憾だ」とした一方、「経済への影響を低減する観点からも、出荷を停止する車種が国の基準に適合するかどうかの確認試験を速やかに行う。国民の安全・安心の確保を大前提とするのはもちろんだが経済への影響を最小限に抑える観点からも努める」と述べた。 さらに、「日本の基準は国際的な基準に沿ったものだが、今後は自動車メーカー各社と意思疎通をしながら、認証制度を合理的なものにして適切に運用していく必要がある」ことにも言及した。旧運輸省は許認可行政の最たる役所であり、自動車業界も「お上への意識」が高い。今回の事態が、国交省の「面子」を刺激したものとなったことも確かだろう。
実際、今回のトヨタにまで広がった認証不正の是正を考えるに当たって、もはや自動車メーカー個社の問題だけでなく、自動車業界全体の問題として捉えていかねばならないのではないか。 となると、自動車業界の“総本山”である日本自動車工業会(自工会)が動かなければなるまい。自工会は、豊田章男氏が会長を異例の3期6年務めて、24年1月に片山正則いすゞ自動車会長にその職を譲ったばかり。片山自工会体制が今年からスタートしたが、幸いいすゞだけが一連の不正から外れていることで、リーダーシップを発揮しやすい。 自工会には、事務局トップの副会長専務理事に経産省の自動車課長OBが就く慣例があり、5月23日に松永明元特許庁長官が就任したばかりだ。加えて、事務局次席の常務理事には国交省の自動車局元幹部が就く慣例もあり、昨年4月に江坂行弘元国交省自動車局次長が就任している。今回の事態で日本車全体の信頼問題になり、今後の日本車の国際競争力が問われる流れを是正していくには、自工会と国交省との対話による改善の方向も求められよう。