中平卓馬「氾濫」、タカ・イシイギャラリーで開催
日本の写真表現の転換期に重要な役割を果たし、いまなお国内外で現代の写真表現に大きな影響を与え続けている写真家・批評家の中平卓馬 (1938~2015)。その個展「氾濫」が、東京・六本木のタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/ フィルムで開催される。 中平は東京生まれ。63年東京外国語大学スペイン科卒業。月刊誌『現代の眼』編集部勤務中に、誌面の企画を通じて写真に関心を持ち、65年に同誌を離れ写真家、批評家として活動を始める。68年に多木浩二、高梨豊、岡田隆彦らと季刊誌『PROVOKE』を創刊(森山は2号より参加、3号で終刊)。73年に刊行した『なぜ、植物図鑑か』以降、それまでの姿勢を自ら批判し、「植物図鑑」というキーワードをかかげて活動を開始。新たな方向性を模索した。『決闘写真論』が単行本として刊行された77年に病に倒れ、記憶と認知機能の多くを失う。翌年、妻子と共に療養を兼ねて沖縄に旅行、そのときの撮影で、写真を撮ることが自らの原点であると自覚して以降、日々の撮影が日課となり撮影行為が継続されていった。83年に復帰後初となる写真集『新たなる凝視』を刊行。90年代以降はカラーに移行し、縦位置の構図による独特のスタイルを徐々に確立した。97年にカラー作品による初めての個展「日常 中平卓馬の現在」(中京大学アートギャラリーC・スクエア)を、2003年に初の大規模回顧展「中平卓馬 原点復帰―横浜」( 横浜美術館)を開催。また今年、「中平卓馬 火―氾濫」(東京国立近代美術館)が開催されたことは記憶に新しい。 本展は、1960年代半ばから2010年代初頭に至る中平の50年近くにおよぶ軌跡から、1970年代前半、カラーで都市や都市的な建築をテーマにした写真をより意識的に発表していた時期にフォーカスするもの。《氾濫》とあわせて、都市論的作品として『アサヒカメラ』1975年1月号に発表された「都市・陥穽」のために撮影されたカラー写真、73年に『朝日ジャーナル』に掲載された地下鉄構内のモノクロ写真などが展示される。