イスラエル政府「レッドライン越えた」…ネタニヤフ首相の私邸に閃光弾
イスラエルがレバノンとパレスチナに対する攻勢を続ける中、反政府デモ隊の一部がネタニヤフ首相の私邸に閃光弾を発射する事件が発生した。同日、政府の徴集命令に反発したユダヤ教超正統派教会の信者らは高速道路を占拠してデモを行った。 17日(現地時間)のタイムズ・オブ・イスラエルなど現地メディアによると、イスラエル当局は前日(16日)、テルアビブ北側カイサレアにあるネタニヤフ首相の私邸を狙って閃光弾2発を発射した容疑者3人を逮捕した。うち1人は予備役将校で、容疑者は反政府デモを主導してきた人物だと、当局は明らかにした。襲撃当時、ネタニヤフ首相と家族は自宅にいなかったと、現地警察は伝えた。今回の事件は先月19日のレバノン武装組織ヒズボラの無人機(ドローン)攻撃以来およそ1カ月ぶり。 イスラエル政界からは「暴力的で無政府的な行為」(レビン法相)、「レッドラインを越えた扇動」(ベングビール国家治安相)という批判が出てきた。現在イスラエルではネタニヤフ首相が主導する戦争と司法府権限縮小の動きに反発する反政府デモが続いている。7月の反政府デモにはテルアビブなど主要都市から約50万人(主催側推算)が集まった。 16日には政府の徴集命令に抗議する超正統派ユダヤ教派「ハレディー」の数百人が高速道路を占拠するデモも発生した。ハレディーは1948年の建国以降、ホロコースト(ナチのユダヤ人虐殺)で抹殺されるところだった文化と学問を守るという名分で兵役が免除されてきた。 しかし15日、イスラエルのカッツ国防相はハレディー約7000人の入営命令を承認した。ハレディーに対する兵役免除が不当だという裁判所の判決に基づくものだ。今回の徴集命令は今月初めにガラント前国防相が解任される前日に決定された。ガラント前国防相は超正統派政党の連立政権脱退の動きに兵役免除のための追加立法を推進してきたネタニヤフ首相と異なる意見を出し、更迭された。 一方、イスラエル現地ではネタニヤフ首相側が反政府デモに対する反発世論を形成するために軍事機密文書を流出させたという疑惑が提起された。ハアレツなど現地メディアによると、首相室のフェルドスタイン報道官と3人の高官が不法に予備役から受けた「ハマスの指導者シンワル氏が人質解放と停戦会談合意を拒否した」という内容の機密文書を独メディアのビルトに流布した。その後、フェルドスタイン氏は自国メディアに報道を要請したという。 メディアはフェルドスタイン氏が文書を確保した時点は6月だったが、報道は反戦ムードが高まった8月末ごろ出てきたと伝えた。これに対し「ハマスとの人質交換と停戦会談推進を要求するデモ隊に対する反発世論を形成するためのもの」(ハアレツ)、「ハマスに対する強硬路線を正当化するために選択的に情報を流した」(タイムズ・オブ・イスラエル)などの指摘が出ている。 ◆内部混乱でも武装組織を狙ったイスラエルの空襲持続 武装組織を狙ったイスラエル軍の空襲は続いている。イスラエル軍(IDF)は16日から2日間、レバノン・ベイルート南部ダヒエの武器庫や指揮センターなどレバノンの200カ所を超える軍事目標物を空襲した。レバノン保健省の集計によると、一日に29人が死亡、122人が負傷した。ガザ地区に対する空襲も続いた。ガザ地区民間防衛隊によると、北部ベイトラヒヤの5階建て住居用建物が崩れ、34人の遺体が収拾された。 特にIDFのベイルート中心部にあるアラブ社会主義バアス党事務室空襲でヒスボラ首席報道官ムハンマド・アフィフ氏が死亡したと、匿名のヒズボラ関係者がAP通信に伝えた。今回の空襲に対する事前避難令は異例にもなかったと、タイムズ・オブ・イスラエルは報じた。アフィフ氏は9月末に爆死したヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師の側近で、過去にヒズボラ独自の放送アルマナルTVを管理した人物だ。