市場縮小が止まらないバイク市場、メーカーが見据える未来とは
かつては若者たちにとって憧れの存在だったバイク。その市場は規模の縮小が止まらない危機的な状況に立たされています。こうした状況に、長年にわたり技術を磨いてきたバイクメーカーはどのような未来を見据えているのでしょうか。11月5日まで開催された「第45回東京モーターショー」の会場で、世界4大メーカーのひとつであるヤマハ発動機の担当者に話を聞きました。
“バイク離れ”、実は日本だけではなかった
日本自動車工業会がまとめている数字によると、1980年には約237万台あった国内の新車年間出荷台数は、2016年には約34万台程度まで減少。警察庁がまとめている普通二輪免許の新規交付件数も年2万7000件程度(自動車運転免許は年100万件程度)と低調に推移しています。これに二輪車に対する排ガス規制なども加わり、ヤマハ、ホンダ、スズキ、カワサキといった世界をリードしているバイクメーカーは大きな岐路に立たされている状況なのです。 ただ、ヤマハ発動機技術管理部の辻井栄一郎さんによると、こうした動きは日本だけの話ではないようです。「二輪市場は世界の先進国では日本ほどではないが同様に減少傾向にあります。その要因には様々なものがありますが、可処分所得などの経済的な要因に加えて、かつての“(憧れるのは)車かバイクか”という時代に比べて消費者の選択肢が増加しているのが大きいのではないでしょうか」(辻井さん)。 これは若者のクルマ離れでも言われることですが、近年はスマートフォンの普及などによるライフスタイルの変化などを背景に、消費者の時間の使い方は大きく変化しています。その中で、自動車やバイクといったパーソナルな移動手段に対するニーズや憧れが薄れているというのがバイク市場の縮小が止まらない背景にあるかもしれません。 しかし一方で、自転車を日常的に使う人は減らず、もっと便利なバイクを使いたいというニーズは潜在しているのではないかとも感じます。そこで消費者をバイクから遠ざけてしまう要因のひとつが、「“転倒などが怖い”という不安感ではないでしょうか」だと辻井さんは説明します。同社が独自に行った調査でも、憧れはあるものの二輪免許を取得しない理由の上位には「転倒が怖い」「運転が難しそう」というバイクそのものに対する不安感が挙がっているのだそうです。