“高校生の妊娠”を描くドラマ『あの子の子ども』/ 正解のない着地点をエンタメとして昇華させるアベラヒデノブ監督にインタビュー
――普段からロケ場所を決める時のこだわりはありますか?
しっくりくるかこないかはとても大事にしますね。 台本が成立するかそれ以上のものがないと、ドラマを見ている視聴者さんの思い出になるようなワンカットが撮れそうな場所を意識しています。思い出になるかならないか、結構ポイントです。恥ずかしい言葉ですけどすごく大事にしています。
――最終話に向けての見どころを教えてください。
福(桜田ひより)と宝(細田佳央太)がたどり着く、ドラマの最終ゴール地点であり彼女たちにとってのスタートライン、それにまつわる周囲の人々それぞれの物語も含め、ドラマの世界全体が躍動していきます。 登場人物1人1人が、きっと強く挑戦し、輝く最終回になるのではないかと思っています。 最後まで2人を見守ってよかった、あの子の子どもという世界を見守り続けてよかったと思っていただける12話になっていると思いますので、ぜひお楽しみに。
――アベラさん自身のことになりますが、俳優としても活躍されているその経験が監督職に活きているといったことはありますか?
良くも悪くもあると思います。自分が演者として現場経験させていただいた時に「これやりづらいな」とか「ここまでプレッシャーかけないで欲しかったな」とか、自分が出た時のこの感覚は一生残っているので、それを俳優部にはしないように心がけたりする時はあります。ただ、その配慮が行き過ぎるときもありますね。 俳優部さんも十人十色、いろんなパターンの方がいるので、自分の経験を本当はそこまで監督やるときは活かしすぎなくていいとは思うんです。 ただ、空気作りが大事な現場において、俳優の経験は活きているのかなと思います。 例えば涙を流さないといけない時の前に監督が、「昨日何食べたの?」とか、意外と冗談ベースで話してこられる方もいらっしゃる。僕も基本陽気ではいたい人間ですが、そこは自分が今から泣かないといけないぐらいの気持ちで監督として振る舞いたいと心掛けています。
――最後に、監督を目指す若手制作者たちに、メッセージをお願いします。
「苦しい」が大前提と思いながらやった方がいいと思います。 苦しまないとたどり着けない領域が絶対あって、良いものを作るために苦しむという過程は絶対に必要。でもその苦しみをどうやって楽しむかということが自分たちのモチベーションなのだと思います。 それが本当に「苦しい」だけが残ったら続けられる仕事ではないので、「苦しい」は“良いものが生まれる予兆”だと思っておいた方がいいと僕は思いますね。苦しいのは何かがうまくいってないからで、何かがうまくいってない違和感は、考え抜いたら三つまでしか出てなかったけど、急に99個目にたどり着くような答えがぽっと出たりする。それは苦しまないと生まれないし、楽しいだけでは生まれない領域は絶対あると思います。 今作の公園のロケ地探しもそうですね。一度この場所で撮影するとなったことを全部捨てる判断をしたことはある種苦しみでした。その苦しみのおかげで、作品に合ったロケ地を見つけることができました。早く終わりたいと思ってしまったなら、見えなかった景色です。みんなで公園に向かう途中、ドライブスルーに寄ったことも楽しかった思い出。 どんな苦しみにも楽しめる方法はありますし、苦しみは絶対に必要な過程だと思います。