“高校生の妊娠”を描くドラマ『あの子の子ども』/ 正解のない着地点をエンタメとして昇華させるアベラヒデノブ監督にインタビュー
――撮影中、特にこだわったところを教えてください。
脚本の本当の意図を視聴者さんに届けるということを意識しました。蛭田直美さんが書かれた脚本のこの部分が本当に大事な部分だから、そのセリフを話している人を映すという、ある意味スタンダードなアプローチだと、「この瞬間誰の表情が大事なのか」とか「このセリフは大事だからこそ、聞いている人側を映さないといけないんじゃないか」とか、そういうことは僕自身も発見しながら、編集ではそこを一番念頭に置いていました。 その工夫が、登場人物一人一人の表情が輝いてるというようなことに繋がっていっていたら嬉しいなと思います。
――撮影において苦労したことはありますか。
やはり監督として、仕事として、プロフェッショナルとしてちゃんと向き合いつつも、勉強し続けるのが監督としての仕事だと思うので、そういう意味で言うとこれまでにない一番勉強をし続けなきゃいけない作品だと思いました。 6話がこの編集でうまくいったから7話もうまくいくのかと言ったら違いますし。話ごとにアプローチを変えていかないと、このセンシティブな議論は場合によっては誰か傷つけてしまうかもしれない。でも誰も傷つけない編集にはなっているけど面白いのかと言われたら、エンタメとしては不十分だとか。そういうことを考えたときに、誰も傷つけないし答えも出さない。けれどその上で1人も見ている人を取りこぼさないという、「これはテレビドラマであって、エンターテインメント作品。」という軸だけはぶれないようにしました。チャンネルを変えられたら終わりですから。
――原作漫画では冬から物語が始まりますが、ドラマでは夏になりましたね。
原作では、線がふわっとしていて光のきらめきや屈折した空間みたいなものを重視して書かれています。それがとても印象的で、設定が夏になったとしても、あの何とも言えない雪に包まれているふんわりした優しさや、見ているだけで癒される原作の良さを出していこうと調整しました。場面によっては夏の光ですら、シルエットをうまく使えば暑い季節なのに視聴者さんにとっては冷たい印象を受ける。いい意味でね。そこの表現はとても工夫した点かもしれないです。 ―夏なのに冷たく見せる工夫とはどういうものなのでしょうか。 そこは照明部にすごく頼りました。 実は見えてない外ロケにも照明部のやるべきポイントはたくさんあって、その細かい工夫が外ロケのシーンでも出ていると思います。 例えば主人公たちの頬に木漏れ日が落ちているじゃないですか。自然が多い環境で撮ったからといって、日光はもう刻一刻と移動して影も動いていくため、その中で実は照明を足したり、偽物の木々の枝をつけて木漏れ日を作ったりします。 そのロケーションごとに起こりうる一番美しいシチュエーションをギミックとして組み立てるようにしています。 限られた時間の中ということもあり、ドラマではあまりそこまで手をかけないので、こだわってくれた照明部には感謝しかないです。