【#佐藤優のシン世界地図探索74】生活水準が向上したモスクワから見る「クルスク対テロ作戦」
佐藤 前回少し触れましたが、ロシア国家評議会議長のデュミン大統領補佐官です。プーチンには警護官が6人いて、元々デュミンは24時間警護にあたっているその中のひとりでした。だから、愛人や子供との関係も含めてプーチンの私生活を全部知っています。その6人の中で、デュミンは政治に抜擢されたたったひとりの人物です。この男に、クルスクの対テロ作戦の責任を全て任せたわけです。 ――この方は、プーチンの次を担う世代のトップ候補ということですか? 佐藤 そうなります。今は、国家評議会議長兼大統領補佐官ですが、次の大統領候補として今回の対テロ作戦を全て束ねています。 ――となれば、超優秀なデュミン大統領補佐官は、絶対にうまくやろうと思ってますから、クルスクの対テロ作戦はうまくいきますね。 佐藤 成功するでしょう。デュミンの指揮下にいるのは、連邦保安庁の対テロ特殊部隊、内務省国内軍、それから正規軍の殺戮部隊ですから。彼らに殺しのライセンスを与えて、侵入してきた傭兵たちを全て殺していきます。それで全くの免責という形になっています。 ――英国の殺しのライセンスを持つ007が、ひとりではなく数万人の団体でクルスクに行くということでありますね。 佐藤 そういう形で対テロ作戦を始めています。 だから、クルクスに関しては全体の構造を変えたのだと思います。ウクライナは戦争の構造を変えて、ロシアとの全面戦争に発展させ、そこに西側連合を巻き込もうとしています。ただしヨーロッパは第三次世界大戦を望んでいません。 ――しかし、ゼレンスキー大統領は「もっと武器を下さい。長距離ミサイルをロシア領内で使わせて下さい」と言っています。 佐藤 その長距離ミサイルの使用をヨーロッパが認めると思いますか? ――思いませんが、報道ベースだと英国は射程250kmの空中発射巡航ミサイル「ストームシャドウ」をロシア国内で使うことを認めています。しかし、米国が認めてないという話です。 佐藤 では、西側諸国は武器をもっと供与すると思いますか? ――米国大統領選挙の結果次第かと思います。ハリスならば、バイデン政策を継続します。 佐藤 ヨーロッパ諸国の武器供与の履行率は低いですからね。 ――国際会議の場においては、ゼレンスキー大統領はビッグマウスであります。しかし、ウクライナ軍のクルスク奇襲に対して、ロシア軍が「ウ軍が攻めてきたから反撃する」という戦いを始めるならば、ウクライナには好都合です。しかし、実際にはクルスクだけが「対テロ作戦」ですよね?