“盛れる”から“ナチュラル感”へ…日本生まれのプリクラ、韓国で人気過熱「激しい加工好きじゃない」
美白や目を大きくするなどの加工を抑え、ナチュラル感が特徴の韓国プリクラ(写真シール作製機)が近年、日本人にも人気だ。「盛らない」だけでなく、変化を続ける多様なコンテンツで利用者を飽きさせない。スマートフォンを使ったデジタル時代なのに、なぜ今も写真シールなのか。日韓のプリクラ事情を調べた。(釜山・平山成美) 【写真】推しのアイドルと一緒に撮影しているかのように写してくれる韓国のプリクラ 「韓国人はあまり激しい加工が好きじゃないんですよ」。実物をほぼそのままに映し出す韓国プリクラを好む理由を、釜山大大学院(釜山市)1年の金侑旻(キムユミン)さん(28)はこう説明する。友人や家族との外出時に限らず、美容院の帰りやきれいに化粧した日の1人プリクラも少なくないという。 釜山で韓国プリクラを訪れた日本人に声をかけてみた。北九州市の女性会社員(27)は「韓国のビジュ(アル)文化の象徴として、体験してみたかった」。「日本はかわいく、韓国は美人に仕上がる感じ」と名古屋市の女性会社員(27)は受け止めていた。 韓国の一般的なプリクラは、1回当たり約500円からで、値段は写真の選択枚数で変わる。シート端にあるQRコードを読み込めば、追加料金なしでデジタルデータも得られる。 商業施設などにブースを設ける日本とは違い、本格的な専用スタジオが主流。最近は、撮影時にポーズを取る一連の動きを収めた「タイムラプス動画」(写真を連続してつないだもの)機能もあり「少し不自然な感じがかわいい」(釜山市の21歳女性)と、交流サイト(SNS)に投稿されているのをよく見かける。 プリクラは1990年代、日本で生まれた。日本プリクラは今も昔も「盛れる」機能が強みだ。 日本市場で90%を超えるシェアがあるフリュー(東京)によると、「かわいい」の定義は時代によって変遷。プリクラ機能も、美白化▽目を実物より大きく見せる「デカ目」▽「ナチュラルだけど盛れる」の混合▽撮影後、好みに合わせてメーキャップできる「レタッチ機能」-などと進化を遂げてきた。 国内の売上高は、10代を中心に爆発的な人気を集めた97年、1000億円を超えた。ブーム以降、市場は縮小しつつも波があり、同社によると、近年は年間200億円台で推移。直近の売上高は公表されていないが、同社によると、2023年度は「1秒に1回、どこかで利用されている計算になります」としている。 ♬ ♪ 韓国でもかつて、日本プリクラが普及した時代があったが、スマートフォンで自ら多彩に撮影できるようになって姿を消した。 人気の復調は、韓国プリクラの代名詞ともなった大手ブランド「インセンネッコ(人生4カット)」が登場した2017年ごろだ。再流行の火付け役となり、若者はプリクラ自体を「インセンネッコ」と呼ぶ。利用者は10~20代の女性客が中心で、23年に延べ約2760万人が利用したほどの大人気だ。 その背景について、インセンネッコの広報担当者は「デジタル社会の中で、逆にアナログ性が魅力になっている」と説明。スマホ内に保存されるデジタル画像と違い、プリクラは手元に残る。「デジタルだけだと、撮影を楽しんだ経験が早く消化されてしまう」(同担当者)としている。 ただ、約50のブランドがひしめき、全国で3000ものスタジオが運営されているとの推定があるほど、韓国市場は過熱気味だ。 インセンネッコは違いを出そうと、カメラを天井に配置し、被写体を見下ろして撮影する「ハイアングル」もいち早く導入。人気アイドルや俳優、ディズニーなどとの共同コンテンツの開発も継続中だ。 芸能人と一緒に音声や動きを合わせて撮影するサービスもあり、頭をなでられる疑似体験も楽しめる。ユーザーの声を重視しながら、飽きさせない新サービスを探し続けている。 インセンネッコによると、既に世界20カ国に約270店を出し、九州では福岡市博多区の「博多マルイ」で撮影ブースなどを設置。ほかのブランドも日本に進出してきている。 K-POPやドラマ、映画などの韓国コンテンツ人気がその追い風になっており、フリュー広報担当者は「韓国プリクラはそのままの自分を、日本プリクラは盛れた自分を残したいときにと使い分けて楽しんでもらっている」と分析している。