なぜ西武ニールの不敗伝説はストップしたのか
甲斐拓也を打ち取ったボテボテのゴロが内野安打になるという不運な出塁からすべてが始まった。一死一、二塁にされ、今宮健太にセンターフェンス直撃の2点タイムリースリーベースを打たれた。真ん中高めの甘いツーシームだった。4番起用されている中村晃にライトへ引っ張られた同点タイムリーも森のミットの構えとは“逆”に動いたチェンジアップ。栗原陵矢には、ツーシームを逆方向に狙い打たれ、三遊間を破られた。3-4とスコアボードが動く。ニールは、ここ一番での制球力が不足していた。 ヒーローとなった明石は、試合後、「(ニールは)凄くいいピッチャーでコントロールもいい。そう簡単には点は取れないと思っていた。チーム全員で攻略したという感じ。(ニールには)まだ一回も勝っていなかったのでチームとしても勢いがついた」と語った。 チェンジアップ、ツーシーム、カットボールの3種類のボールを自在に打者の手元で動かすことが特徴のニールに対して、ソフトバンクは、チーム全体で、その“動くボール”に対応するためセンターから逆方向を狙うこと、甘いボールだけを狙うことを徹底してきた。 しかも、この試合まで計18失点していたニールは、そのうち、3回に6失点、6回に5失点と3、6回が“魔のイニング“になっている。打順がひとまわりして、動くボールの球筋に慣れる3回と、球数が100球に近づき、ボールの動きが悪くなる6回が、要注意イニングだったのだが、まさにそこを狙い撃ちされたのである。 ニールの防御率4.46が示すように今季も不敗伝説ストップのピンチは何度かあった。ここまで7試合に登板したが4試合で4点以上を許している。だが、山賊打線の奇跡的な援護射撃があり負けなかった。野球には、こういう不思議な巡り合わせがある。6月26日のソフトバンク戦も4失点したが、8回に木村文紀の逆転満塁弾が飛び出して回避。7月10日のロッテ戦も6失点で絶体絶命だったが、栗山巧の同点2ランで負けが消えている。 この日も、6回にスパンジェンバーグの5号ソロで一度は同点に追いついてもらった。しかし、ソフトバンクが繰り出してきた7回高橋礼、8回モイネロ、9回森唯斗の必勝リレーの前に打線は沈黙。ついに不敗伝説がストップしてしまったのである。 「(自身の)連勝が止まってしまいましたが、振り返って思うのは、ここまで連勝を積み重ねてこられたことを誇りに思うということです。ただ、今日は味方打線も打ってくれたし、勝てる試合だったので悔しいです」 ニールは、広報を通じて、こうコメントした。 確かに誇りにできる凄い数字である。昨年4月9日の楽天戦以来、負けていなかったのだ。13連勝は、西武では“オリエンタルエクスプレス”と称された郭泰源の外国人球団記録に並ぶ記録だった。だが、今季は調整不足だったのか、練習試合から制球の悪さが目につきせっかくの球界屈指の「動くボール」を生かし切れていない。体の開きが早く、打者を幻惑する嫌らしさも消えつつある。なんらかの修正が必要なのかもしれない。勝率5割で首位のソフトバンクとは3ゲーム差。 逆襲を企てるには、ニールの不敗伝説の再スタートが不可欠である。次回登板は7日の日ハム戦が予定されている。