浅木泰昭×堂本光一「王者レッドブルはどこへ向かうのか?」【コンマ一秒の恍惚Web 特別編】
連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE8(特別編) レッドブルとマックス・フェルスタッペンが今シーズンも圧倒的な強さを発揮している。しかし、コース外ではチーム首脳陣による権力闘争や、主要スタッフがチームを離れるという話題など注目を集め、チャンピオンチームに関するネガティブなニュースが飛び交っている。この先、王者レッドブルはどこに向かっていくのか? 【写真】26年からのホンダのF1復帰、F1の未来のあり方についても触れている浅木氏の著書 今回は特別編として、現在のホンダのパワーユニット(PU)の生みの親で、レッドブルとも仕事をしてきた元ホンダ技術者の浅木泰昭(あさき・やすあき)氏とともに、王者レッドブルの未来や好調な走りを見せるRB角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手について語り合った! * * * ■組織におけるリーダーの重要性 堂本 今シーズンもレッドブルはチャンピオン争いをリードしていますが、チーム内ではさまざまな問題が噴出しているように見えます。 浅木 クリスチャン・ホーナー代表とレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーのヘルムート・マルコ氏の間に確執があると言われていますが、真相はわかりません。ただ2022年にレッドブルの創業者、デートリッヒ・マテシッツさんが亡くなったことが引き金になっているのは間違いないと思います。60年以上生きてきた私の経験から言わせてもらえば、創業者のような強力なリーダーが組織からいなくなると、こういう権力争いのようなことが起こる。それが世の常です。 堂本 浅木さんのおっしゃる通りだと思います。最近のレッドブルの動きを見ていると、組織におけるリーダーの重要性をあらためて感じます。 浅木 でも私が想像したよりも、こういうゴタゴタが起こるタイミングが早かった。一緒に仕事をしてみて、レッドブルは本当にいいチームでした。スタッフはみんな和気あいあいと働いていて、他所のチームから高給で誘われても移籍するスタッフは少なかった。ただ今回のようなチーム内の揉めごとが長引くと、「ほかのチームに行ったほうがいいや」となってしまうでしょう。レッドブルの強さがどこまで続くかというのは、今回のゴタゴタがいつまで続くかにかかっているとみています。 堂本 レッドブルの主要スタッフ流出の噂が話題に出ていますが、先日、レッドブルで長年マシンの設計を手掛けてきたデザイナーのエイドリアン・ニューウェイ氏がチームを離れることが正式に発表されました。レッドブルは今、勝ち続けていますが、それと同時に「危機」にあるということかもしれませんね。 浅木 そうだと思います。本田宗一郎さんやレッドブルのマテシッツさんのような強力なリーダーがいれば、今回のようなゴタゴタは起こらないんです。そういう意味で言うと、アストン・マーティンはオーナーのローレンス・ストロールさんが元気なので、あと10年ぐらいはこういう揉めごとなしで行けると思います。将来性を考えると、ホンダはいいところと組んだと思います。