「痴漢は犯罪です」もう泣き寝入りしない、女子生徒の決意から生まれた缶バッジ 10年間配布してきた松永さんが話す「被害者でも加害者でもない、あなたにできること」
「痴漢は犯罪です 私たちは泣き寝入りしません」。松永弥生さん(59)は10年間、こうした痴漢抑止を目的とした缶バッジを製作し、希望者らに無料で配布してきた。 【表】16~29歳の1割が痴漢被害を経験 内閣府が初調査、相談体制に課題
松永さん自身も痴漢に遭った経験があったが、当時は周囲に相談することはなかった。 「自分が警察に被害届を出さなかったから」。一向になくならない痴漢。黙殺してしまった自分にもその責任の一端があるのではないか、とさえ思っている。どうすれば社会から痴漢がなくなるのか―。松永さんは一般社団法人「痴漢抑止活動センター」を設立し、学生らを巻き込んでバッジ製作を始めた。きっかけは、ある女子高生の経験を耳にしたことだった。(共同通信=丹伊田杏花) ※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 ▽手作りのカード 約10年前。女子生徒は高校入学直後から、通学電車で度々痴漢に遭っていた。2年生になり、「今日はもう我慢しない」と決意し、勇気を出して自分で犯人を捕まえた。 痴漢されたら声を上げることはできたが、「そもそも痴漢に遭いたくない」。思い悩んだ末、母親と相談し、「痴漢は犯罪です」と書かれた手作りのカードをカバンに付けた。すると、ぱったりと被害がなくなった。
▽忘れていた自身の痴漢被害 女子生徒の母親が、痴漢で悩む誰かの参考になればと、カードを付けるようになった経緯をSNSにつづった。元々、母親と知り合いだったという松永さんはSNSを見て、自分がかつて受けた被害を思い出したという。 「8歳から20歳頃まで電車で何度か痴漢に遭っていた。体を触られたら手で払ったり、自分のカバンで防御したりしたが、慣れもあって被害届を出さなかった。当時の私に、彼女のような知恵と勇気もなかった」 「たった一人でカードを付けて戦った彼女をひとりぼっちにしたくない。被害者は彼女だけではなく、他にもいるはず」 松永さんは2015年、「痴漢は犯罪です」と書いた女子生徒の手作りカードをモデルに缶バッジを考案。2015年はデザインをインターネットで募集し、2016年からは学生対象のコンテスト形式にした。 性犯罪を許さない社会を目指す活動を本格化させようと2016年、痴漢抑止活動センターを設立。現在は松永さんを含めた6人が中心となり、若者向けの防犯講座をしたり、痴漢に関する防犯教育ができるような教材を作成したりしている。
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