「痴漢は犯罪です」もう泣き寝入りしない、女子生徒の決意から生まれた缶バッジ 10年間配布してきた松永さんが話す「被害者でも加害者でもない、あなたにできること」
▽痴漢抑止バッジ、効果は? コンテストは今年で10回目を迎えた。これまで約7千点の応募があり、3、4割は男子学生から寄せられた。最優秀賞、優秀賞などに選ばれた5点を製品化する。 2023年に最優秀賞に選ばれたのは、制服姿の女子高校生がこちらを指さしているデザイン。「いつでも見ている」との意味を込め、加害者が人混みに紛れてもずっと見ていることを訴えた。2021年の特別審査員賞は「相手が誰でも痴漢はダメ」。性別問わず被害に遭う可能性があることを表現したという。 実際に被害者の話を聞いてからバッジをつくる人もいる。利用者からは「バッジを着けてから痴漢されることがなくなりました」といった声も届く。 参加対象は中学生以上の学生だ。松永さんはその理由を「若い頃に痴漢の実態を知ることが重要。そうした経験を持つ大人が増えれば、社会全体が痴漢について真剣に向き合えるようになると思う」と話す。
▽被害増加も「氷山の一角」 新型コロナウイルス禍で一時は減少した痴漢だったが、日常が戻り始めると、徐々に増えている。 警察庁によると、都道府県条例に違反した痴漢摘発件数は2019年に2789件だったが、コロナ禍となった2020年は1915件と減少。2021年も1931件だったが、行動制限が緩和された2022年は2233件に増加し、2023年も2254件だった。 しかし、こうした摘発件数は「氷山の一角」と松永さんは言う。7月に公表された内閣府調査では、これまでに受けた痴漢被害について回答者の約3割が「どこにも相談しなかった」と答えた。 警察庁で犯罪被害者支援に携わったことのある追手門学院大の桜井鼓教授は「煩雑な刑事手続きや、学生であれば親や学校を巻き込むかもしれないなど精神的、時間的負担を考えて、相談をためらうケースもある」と分析する。 内閣府調査のアンケートには「警察などに被害を話した時に、理解があるか気にする人も多い」とのコメントも寄せられた。桜井教授は「対応する警察官によって差が出ないように、性被害者特有の心理を理解する必要がある」と指摘。その上で、「許可なく触られたときに『嫌です』と声を上げることを学校教育で教えていくことが大切だ」と訴える。
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