せっかく入れた学童に「行きたくない」。待機児童は解消しても継続率は低迷…保育に不満の声も
◆入所児童数は毎年増えているけれど、継続率は低迷……。
学童保育では、受入児童数拡大による「待機児童解消」が図られています。しかしせっかく入れた学童保育も、「通いたくない」といって途中でやめてしまう子も少なくありません。 【表】学校の先生の平均年収ってどれくらい? 学童保育の普及・発展のために1967年から活動を続けている「全国学童保育連絡協議会(以下、全国連協)」は、2024年1月「学童保育(放課後児童クラブ)の実施状況調査結果」を発表(*1)。 「学年別の入所児童数と割合の推移」では、すべての学年で入所児童数が増えていると同時に、学年が上がるほど児童の数が減っていることがわかります。たとえば、2022年に入所した1年生は42万2583人だったのが、2023年には2年生が39万1393人になっています。つまり、3万人近い子どもたちが通い続けずに辞めているのです。 せっかく待機児童が解消しても、通い続けることができない場所になってしまっていては意味がありません。 国民生活センターによる調査研究によれば(*2)、年度途中や学年が上がるときに学童保育を辞めてしまう理由として上がったのは、引越し・転勤、就業状況の変化、保育料の高額化といったやむなき事情に加えて、「子どもが学童保育に行きたがらない・指導員の対応、保育内容に不満があった」という声もありました。 全国連協・事務局次長の佐藤愛子さんは、「もちろん高学年になれば、一人でお留守番できる子もいるでしょう。でも、1日2~3時間のお留守番ができることと、子どもだけで過ごすのが毎日続くことは、意味あいが異なると思うのです」と語ります。
◆「子どもの居場所」の役割はそれぞれ違う
政府は2023年12月に「こどもの居場所づくりに関する指針」を閣議決定しました。しかし、そこには「学童保育」という個別の事業についての記載はありません。 学童保育は本来、親が就労などでいない児童が利用するものです。しかし最近は、親の就労状況などに関わらずどんな子でも受け入れる「全児童対策事業」や「放課後子供教室」を実施している自治体も増えてきました。これらは学童保育と一体で運用されていることも多くなっています。 ただ「全児童対策事業」や「放課後子供教室」と学童保育とは、本来役割が違うもの。“子どもの放課後の居場所”というだけで、すべて一緒くたに議論されてしまうことに、佐藤さんは懸念を示します。 「学童保育は子どもたちの生活の場ですから、一緒にいる大人との関わりが大切。関わる大人には専門的な知識や技能、倫理観が求められます。指導員と保護者の信頼関係も必要です。たとえば子どもが行き渋る日があっても、信頼できる指導員がいれば、保護者も子どもの状況を伝えることで安心して仕事へ行けると思います。 指針にはそういった内容がありません。もちろん、今は子どもが気軽に遊べる場所がどんどん減っていますから、放課後子ども教室など誰でも利用できる場所が必要なことは理解できます。ただ、生活の場である学童保育とは、別の枠組みで運営を検討する必要があると考えています」(佐藤さん)