せっかく入れた学童に「行きたくない」。待機児童は解消しても継続率は低迷…保育に不満の声も
◆9割以上の子が卒業まで利用する、川崎の「学童ほいく オカリナ」
学童保育に途中で通わなくなる子がいる一方、ほとんどの子どもたちが小学校6年生の卒業まで通い続ける学童保育もあります。神奈川県川崎市にある「学童ほいく オカリナ」です。2003年、保護者と指導員による自主保育として立ち上げられました。 「もちろん高学年になれば、家で一人でお留守番もできます。でも、ここに来れば仲間もいるし、待っててくれる大人もいる。そんな気持ちで通ってくれているんじゃないかなと思います」と話すのは、運営者の「一般社団法人オカリナの森」代表理事・岩渕康之さんです。 「ただいま」に答えてくれる指導員の「おかえり」の言葉に、「待っていたよ」という言外の気持ちを感じると、子どもたちはほっとするでしょう。オカリナでは、子どもだけでなく保護者との関係も大切にしていて、メールやLINEのオープンチャットを使って、毎日の生活の様子を共有しているとのこと。 保護者はちゃんとみてくれている安心感と同時に、「もっと話を聞きたい」「もっと様子を知りたい」という気持ちを持つようで、月に一度の保護者会にはほとんどの人が参加するそうです。 一見、低学年の子たちの方に手をかけそうですが、高学年の子どもたちとのコミュニケーションも大事にしているというオカリナ。「この場所がどうしたら良い場所になるかを一緒に考えたり、当たり前のように来年の話もしたりします」と岩渕さん。卒業まで多くの子どもたちが通い続ける理由は、こうした関わりにあるのかもしれません。 オカリナの指導員である臼田英子さんは、「よく叱られるような子もいるけれど、休まずここに来てくれます。オカリナがその子にとって大切な場所になっていることを実感できるから、ちゃんと運営していかなくてはという気持ちが引き締まります。保育は大変なことも多いですが、子どもたちの態度や反応がモチベーションになっています」と話します。
◆子どもが通い続けられる学童保育の整備をめざして
「国や自治体には、学童保育を必要とする子どもたちが、必要な期間、きちんと通い続けられるだけの施設をつくってほしいし、安心して生活できる場をつくれるように継続的に人を雇ってほしいと思っています」と佐藤さん。 学童保育の入所児童数が増加している今、問われているのは保育の質。それをどれだけ改善できるかによって「学童に行きたくない」という子どもの数も変わってきそうです。 【参考】 *1:2024年1月「学童保育(放課後児童クラブ)の実施状況調査結果」(全国学童保育連絡協議会) *2:2009年度「学童保育サービスの環境整備に関する調査研究」(国民生活センター)
▼古屋 江美子プロフィール
子連れ旅行やおでかけ、アウトドア、習い事、受験などをテーマにウェブ媒体を中心に執筆。子ども向け雑誌や新聞への取材協力・監修も多数。これまでに訪れた国は海外50カ国以上、子連れでは10カ国以上。All About 旅行ガイド。
古屋 江美子(ライター)