これが内燃エンジン最後のゴルフか!? モータージャーナリストの大谷達也が新しいゴルフにドイツで試乗 そのデキとは?
ゴルフは今もCセグメントのベンチマークか?
Cセグメント・ハッチバックのベンチマークたるゴルフ。改良を受けたベーシック・モデルにドイツのウォルフスブルクでモータージャーナリストの大谷達也が試乗した。 【写真17枚】マイナーチェンジを受けてヘッドライトなどのデザインが変わったゴルフ 改めて詳細画像でチェックする ◆ゴルフ8.5 マイナーチェンジを受けたゴルフに、フォルクスワーゲンのお膝元であるドイツ・ウォルフスブルク周辺で試乗した。ゴルフ8の改良版なので、便宜上、ゴルフ8.5と呼ばせていただく。 主な変更点は、ヘッドライトのデザインや機能性が見直されたほか、インフォテイメントは大型タッチ・ディスプレイを用いたMIB4に進化。そして3気筒1リッターマイルド・ハイブリッドの1.0 eTSIがラインナップから落ち、4気筒1.5リッターマイルド・ハイブリッドの1.5 eTSIに集約された(出力は116psと150psの2タイプ)。 このうち、今回は116ps版を積む1.5 eTSIというグレードを試した。 基本的に116ps版は1.0 eTSIの置き換えとの位置付けだが、ボトムエンドでは、モーター特有のグイグイと押し出されるような加速感が明確だった1.0 eTSIに比べると、新しい1.5リッターエンジンはいかにも内燃機関らしい自然なトルク特性で、多くのドライバーにとってより扱いやすいキャラクターに仕上げられているように感じた。 ただし、私にとってそれ以上に印象的だったのが乗り心地面の進化である。 ゴルフには、長年受け継がれてきた伝統の乗り味があったというのが私の持論。それをひと言で説明すれば、路面から伝わるショックをおだやかに吸収するとともに、ボディの姿勢をフラットに保つもので、これが長距離ドライブでも疲れにくいゴルフのキャラクターを生み出していた。しかも、足まわりにどんなに大きなショックが伝わっても、剛性感が高いボディがこれを受け止め、微振動などは一切伝えない。こうした頑丈さというかしっかり感が、ゴルフならではの安心感につながっていると私は理解していたのである。 ところが、デビュー直後のゴルフ8は、段差を乗り越えた際に足まわりのどこかに微振動が残る傾向が見受けられたほか、動き出しもやや突っ張っていて、しなやかさに欠けているように思われたのだ。 この問題について、私はフォルクスワーゲンのエンジニアと直接、議論したことがあるが、そのときの説明によれば、前述の微振動は足まわりのバネ下部分が共振するホイール・コントロールと呼ばれる現象で、省燃費タイヤを装着すると顕著になる傾向があるとのこと。突っ張っているかのような感触も、サイド・ウォールの硬い省燃費タイヤが原因だったとすれば納得がいく。 しかし、ゴルフ8.5はほとんどの場面で微振動を感じさせなかったほか、足まわりが突っ張っているような印象も消え去っていた。これだったら「ゴルフらしい乗り味」と評してもいいだろう。 次期型はEVに一新される見通しのゴルフ。だとすれば、ゴルフ8.5は「最後のエンジン搭載ゴルフ」となる。ウォルフスブルクの技術者たちは、それに相応しい仕事をやり遂げたようだ。 文=大谷達也 写真=フォルクスワーゲン (ENGINE2024年11月号)
ENGINE編集部