日本企業の事業承継、「脱ファミリー化」が加速 後継候補に「ベテラン」求める志向が強まる
全国「後継者不在率」動向調査(2024年)
日本企業の事業承継について、2020年以降の過去5年間で代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性(就任経緯別)をみると、24年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが36.4%に達した。これまで事業承継の形式として最も多かった「同族承継」(32.2%)を速報値段階で上回った。2023年(実績値)は「同族承継」(36.0%)が最も多かったものの、「内部昇格」が占める割合との差は1.6ptまで縮小した。 2024年は買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.5%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.5%)など、社外の第三者を経営トップとして迎え入れる事業承継の割合も増加傾向が続いた。日本企業における事業承継は、これまで最も多かった身内の登用など親族間承継から社内外の第三者へと経営権を移譲する「脱ファミリー化」の動きが加速している。
2022-24年の3年間で代表者交代が行われた企業のうち、後継者として就任した後任代表者の業界や経営経験の有無を分析した。その結果、24年は業界経験が「10年以上」ある後任代表者が8割超を占め、業界に精通した人材が多く代表者として就任した。このうち、「経営経験の有無」について分析したところ、最も割合が高かったのは「3年未満」(59.0%)で、多くがベテラン社員や役員として業界経験が長いものの、経営経験が少ない人材だった。一方、業界に明るく経営経験も豊富な人材が後任代表者として就任する割合も増えており、24年は業界・経営経験がともに10年以上の割合が14.2%を占め、22年(13.6%)から拡大傾向が続いた。 近時の事業承継では「社長経験者」など、外部のベテラン人材を後継候補として求める傾向もみられる。
後継者候補属性:「親族」「非同族」の割合が拡大 「ファミリー」承継は低下傾向続く
後継者候補が分析可能な全国約12.7万社の後継者属性をみると、最も多いのは「非同族」の39.3%で、前年を1.8pt上回った。2023年調査に続き、後継者候補は「非同族」が3年連続でトップとなった。同族承継では「子ども」(31.4%)、「配偶者」(4.9%)はともに前年から低下した一方で、「親族」(24.4%)は前年から上昇するなど、承継先の傾向が分かれた。 現代表者の就任経緯別にみると、「外部招聘」によって現代表者が就任した企業では、後継者候補を「非同族」とする割合が9割に達した。「内部昇格」でも、非同族を後継者候補に据える傾向に変化はなかった。 後継者候補で「非同族」以外の割合が大きいのは、現代表者が「創業者」と「同族承継」企業のみだった。ただ、こうした企業でも後継候補を身内以外の第三者となる「非同族」に求める傾向が強まっており、「同族承継」企業における後継候補「非同族」の割合は前年比1.2pt、「創業者」は2.9pt、それぞれ上昇した。ファミリー企業でも、親族外事業承継=脱ファミリーへ舵を切る動きが強まっている。