日本企業の事業承継、「脱ファミリー化」が加速 後継候補に「ベテラン」求める志向が強まる
後継者不在の中小企業を狙った悪質な「M&A仲介」による事件、今後の影響に注視
企業の約半数が後継者候補を「決めた」なかで、今後は経営引き継ぎなど具体的な承継ステージにおける支援の在り方が重要性を帯びてくる。帝国データバンクが集計した「後継者難倒産」は2024年1-10月で455件発生し、過去最多だった23年同期と同水準で推移している。近時は「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに事業継続を断念するケースも目立つ。 現代表者が後継者候補を一旦は選定したものの、その後白紙化するケースが2024年調査にも一定割合で発生した。現代表者が能力面や素質面などから後継者への経営引き継ぎに消極的、または後継者候補と目した人材から事業承継を断られるなど、事業承継に携わる当事者の間で「認識の差=ミスマッチ」に端を発した、いわゆる「あきらめ」防止が課題となる。 事業承継の手法として近年注目された「事業承継型M&A」の動向も焦点となる。後継者がいない中小企業の代表者が仲介業者を通じて売却したものの、買収元企業により給与遅配や税金未納など健全な企業経営が行われない、個人保証が解除されないといったトラブルが相次ぎ表面化している。事業の「第三者承継」へのシフトが鮮明となるなかで、有力な選択肢だったM&Aによる事業承継に影響を及ぼしかねず、後継者不在率の動向とともに事態の注視が必要となる。