施行前でも「コイルガン所持」で逮捕? 改正銃刀法を整理する
電磁石の磁力を使って弾丸を発射する「コイルガン」(電磁石銃)を所持したとして、栃木県の29歳男性が逮捕されたとNHKや時事通信などが報じている。しかし、コイルガンの所持を違法とする改正銃刀法は2024年6月に公布されたものの施行前で、効力はまだない。にもかかわらず逮捕とはどういうことだろうか。 【画像】防衛装備庁が開発する「巨大レールガン」
改正銃刀法で何が変わったのか
改正された銃刀法(正式名称は銃砲刀剣類所持等取締法)は、自作拳銃で安倍晋三元総理を銃撃した事件や、長野県で起きたハーフライフル銃による殺人事件を受け、銃の悪用防止策を強化したもの。 中でも今回の事件に関わる部分では、従来「装薬銃砲」(火薬式の銃や砲)と「空気銃」(エアガン)を合わせて「銃砲」と定義していたところに、新たにコイルガンが追加された。つまり、今まではコイルガンは規制対象ではなかった。 改正法のもう一つの大きなトピックは「あおり・唆し(そそのかし)罪」の新設だ。これはざっくり言えば「拳銃などの不法所持を公然とあおったり唆したりする行為」を罰するもので、警察庁は例として ・インターネット上で、拳銃の自作方法を解説した動画を投稿し、不法所持を呼びかける ・不特定または多数の人が見ることのできるSNSで、「拳銃を販売します」などと言い、価格・売主の連絡先を投稿する などの行為が犯罪に問われる可能性がある、としている。 また、改正銃刀法の中であおり・唆し罪のみ7月に施行済みとなっている。
容疑者は何の容疑で捕まったのか
「コイルガン所持の疑いで逮捕」との報道もあるが、コイルガン所持を違法とする改正銃刀法は未施行であり、容疑者が逮捕された11月18日時点で違法ではない。 ITmedia NEWSがこの事件の担当である警視庁に問い合わせたところ、容疑は「10月5日、被疑者方において回転弾倉式拳銃1丁を所持したもの」という。少なくとも法的観点では「コイルガン所持」が逮捕容疑ではなさそうだが、コイルガンが回転弾倉式拳銃の機能も持っていたのかは明らかでない。 報道写真で出ているコイルガンのような構造の銃と、容疑にある「回転弾倉式拳銃」が同一のものかどうかは「確認と回答に時間がかかる」(警視庁)として直ちに答えは得られなかった。