ACLよりJ残留?イニエスタ、大迫を温存で逆転負けしたヴィッセル神戸の吉田采配は正しかったのか?
神戸の場合、ACL出場は今大会がまだ2度目だ。初めて臨んだ2020年大会は堂々のベスト4進出を果たしたが、蔚山現代(韓国)との準決勝では延長戦の後半終了間際にPKを献上。まさかの幕切れに涙しながら捲土重来を期した経緯がある。 イニエスタに代わってゲームキャプテンを務め、マリノス戦に続いて全北現代戦でも先発フル出場した山口は、ベスト8敗退を受けて複雑な心境を明かしている。それは槙野が言及した、残りのシーズンにおける優先順位に通じるものだった。 「もちろん重要な大会でしたけど、そこ(ACL)へ余裕を持って挑めるほどリーグ戦で結果が出ていなかった。自分たちがもう少しいい順位にいれば、また違った気持ちだったのではないかと思っているけど、すべては自分たちが招いたものなので」 ACLで勝ち残っていた神戸、マリノス、そして浦和は、ノックアウトステージ期間中にはJ1リーグ戦が組まれていない。9月3日まで日程が空くにもかかわらず、それでもコンディションに不安を抱えるイニエスタと大迫の出場を回避させた。 試合後の監督会見では、イニエスタと大迫に対してこんな質問も飛んだ。25日の準決勝ではプレーできるめどが立っていた状況でのベンチ外だったのか、と。 「そこに関しては、明言は避けたいと思います」 迷走してきた今シーズンの神戸で、実に4人目の指揮官となる吉田監督は苦笑しながら言葉を濁し、視線をすでに12日後に待つJ1リーグ戦へ合わせていた。神戸は京都サンガ.C.のホーム、サンガスタジアム by KYOCERAに乗り込む。 「まずは十分なレスト(休養)を与えて、しっかりとトレーニングを積みながら気持ちを切り替えていきたい」 マリノスとのラウンド16では、前線から積極果敢にプレスをかけ続ける戦い方が奏功した。しかし、手にしたはずの好感触は、ターンオーバーで臨んだ全北現代戦で途切れてしまった。しかも、38歳のイニエスタが新たな戦い方にフィットするかどうかは現時点でわからない。不完全燃焼の思いを抱えたまま、神戸はつかの間のオフに入る。 (文責・藤江直人/スポーツライター)