ACLよりJ残留?イニエスタ、大迫を温存で逆転負けしたヴィッセル神戸の吉田采配は正しかったのか?
中3日で準々決勝を迎える日程は、全北現代も変わらなかった。ただ、大邱との韓国勢対決となったラウンド16で延長戦を、しかも暑さが残る17時のキックオフで戦っている分、体力の消耗度は神戸より激しかったかもしれない。 それでも、全北現代は先発メンバーの入れ替えを1人だけにとどめた。第2試合でパトゥム・ユナイテッド(タイ)を4-0で一蹴した浦和レッズも、ラウンド16から中2日の強行日程だったにもかかわらず、先発の変更を1人にとどめている。 その浦和の一員としてACLに5回出場し、優勝と準優勝を一度ずつ経験しているDF槙野智章(35)は、試合後の取材エリアでこんな言葉を残している。槙野もリザーブで終えたマリノス戦から一転、全北現代戦では先発して74分間プレーしている。 「ACLでメンバーを変える、というのはなかなかないことなんですが……」 補足すれば同じACLでもグループリーグではなく、負けた時点で大会から姿を消すノックアウトステージでの選手の入れ替え、いわゆるターンオーバーはまずありえないと槙野は言及した。ましてや日本で集中開催されている今大会の東地区のノックアウトステージは、ラウンド16から準決勝まではすべて一発勝負となる。 さらにつけ加えれば、もちろん吉田監督のさい配に異を唱えたわけでもない。それでも浦和時代に何度も肌で感じてきたACLへの熱量を、今シーズンから所属する神戸へ伝えられないまま敗退した責任を自分自身へ向けながら槙野は言葉を紡いだ。 「クラブとしてこの大会を取りにいく、という姿勢を出さないといけなかった。選手一人ひとりのこの大会に向けたモチベーションも違っていたというか、浦和のときに僕が感じた『みんなでACLを取りにいこう』とは違うような気がしていた。優先順位がACLよりも、J1リーグ戦の残留争いの方にあったかもしれない」 終盤戦に入ったJ1リーグ戦で神戸は16位に低迷している。自動降格圏からは脱出したものの、このままの順位で終えればJ1参入プレーオフに回る。中位以下が勝ち点を競っている大混戦で、残りわずか9試合となった今後をどうしても考えてしまう。 もっとも、神戸は三木谷浩史会長(57)の大号令のもと、アジアのナンバーワンクラブになるという目標を掲げている。成就させるための最短の道はACLの制覇。しかし、出場権獲得を含めて、毎年チャンスがめぐってくるとは限らない。