「我々は澄んだ目を取り戻すことができる」カンヌ国際映画祭総代表、ティエリー・フレモーが語る映画の始まりと日本映画の未来
カンヌ国際映画祭の総代表であり、リュミエール研究所で所長を務めるティエリー・フレモーさんへのインタビューをお届け。11月22日公開の新作映画『リュミエール!リュミエール!』に込めた思いから、自身の半生を綴った著書『黒帯の映画人』に至るまで、たっぷりとお話を伺った。(取材・文:山田剛志)
2作目の真のテーマは「映画そのもの」
―――まずは、前作『リュミエール!』(17年)以来、7年ぶりに発表された映画『リュミエール!リュミエール!』についていくつか質問をさせていただきます。船上からヴェネツィアの街並みを捉えた移動撮影をはじめ、多くの映像が息を呑むようなスペクタクルを形成しており、前作にも増して映画館で見ることに意義のある作品になっていると思いました。今回、どのような基準で作品を選ばれたのでしょうか? 「前作は、歴史的な観点に重きを置いて作品を選びました。その結果、リュミエール作品の中でも、有名な映像をセレクトすることになりました。それらは、私がよく知っている作品でもあります。その後、リュミエール作品の修復を続ける過程で、ほかにも素晴らしい映像がたくさんあることを知りました。そこで、第1作とは異なるナレーションをつけて、新たな作品として編集することにしたのです。2作目の真のテーマは「映画そのもの」です。「映画の美しさ」がテーマと言ってもいいでしょう」 ―――フレモー監督は前作から一貫して、リュミエール作品の、構図の妙、人物の動かし方といった「演出」の素晴らしさに着目されています。そこには、どのような思いがあるのでしょうか? 「リュミエールの映画に対する私の視点は、映画愛好家(シネフィル)の視点です。だからこそ私は、リュミエール作品を通じて、ジョン・フォードやウィリアム・ウェルマンといった劇映画の監督についても多くを語っています。私にとってリュミエールは、映画の歴史のなかに位置づけられるものだからです。リュミエールの映画は、映画そのものといえます。その後130年間、映画が存在しつづけることになる、一つのエビデンス(証拠)なのです」