尊敬する先輩から学んだ「振る舞い方」 東日本インカレ連覇の日体大・折立湖雪、自身の得点だけでなく仲間の好プレーにも笑顔
2セットを連取して迎えた第3セット、24-22。あと1点で日本体育大学の優勝が決まる。セッターの岩本沙希(2年、就実)は、左サイドの折立湖雪(3年、東九州龍谷)にボールを託した。思い切りたたきつけたボールは相手コートのど真ん中に落ち、次の瞬間、歓喜の輪ができた。 【写真】青山学院大学との決勝でバックアタックを打ち込む折立湖雪 岩手県花巻市で開催された第43回東日本バレーボール大学選手権大会(東日本インカレ)の女子大会で、日本体育大が連覇を達成。試合直後「実感がないです」と率直な感想を口にした折立は、「自分のバレー人生の中で、大舞台での優勝を決める一打を打てたことはありませんでした。今回はチャンスが回ってきたと思って、打ち切ることだけを考えていました」と〝最後の1点〟を振り返った。
自主練で増やした「スパイクの引き出し」
高校時代はパワフルなスパイクを武器にするアウトサイドヒッターだったが、大学では周囲のレベルの高さを肌で感じ、「ワンパターンでは通用しない」と総合力を向上させた。 「クロスが得意なんですけど、大学ではずっと得意なコースに打っていても相手のリベロに拾われてしまう。『スパイクの引き出しを増やす』ことをテーマにたくさん自主練をしてきました」 その言葉通り、決勝では要所でキレのあるクロススパイクを決めた一方、フェイント攻撃やバックアタック、ブロックポイントなどあらゆる形で得点を生み出した。「必ずBパス以上は返す。できて当たり前にする」との思いで磨いてきたレシーブでも貢献。第1セットから第3セットまで終始、攻守で存在感を光らせた。
尊敬する前主将から受け継いだ「笑顔」絶やさぬプレー
大学1、2年時はピンチサーバーとしての出場が主で、3年生になった今年からスタメンに定着した。昨年の東日本インカレは、大会前に教育実習がありフィジカル面に不安のあった前主将・石倉沙姫(現・デンソーエアリービーズ)に代わって1回戦から準決勝までスタメン出場。しかし、優勝のかかる決勝は石倉にスタメンの座を譲った。 決勝は石倉が中心となって戦い、筑波大学とフルセットまでもつれた激闘を制し頂点に立った。折立は「自分が(スタメンに)入って優勝できればベストだったんですけど、自分が入って勝てる確証は持てなかった。個人的には悔しい思いをした優勝でした」と1年前を回顧する。今大会は「自分が入った上で、絶対に勝ちたい」と意気込んで臨んだ。 同じポジションの石倉からは技術面はもちろん、プレー中の「振る舞い方」も教わった。「(昨年の)4年生が1人で大変だったはずなのに、大変さを見せずに常に笑顔でコートに立っていた。ライバルという関係ではありましたけど、『この人のために』と思わせてくれる選手で、尊敬していました」 昨年は東日本インカレの決勝と秋季リーグの東海大学戦で、足をつった石倉に代わって出場する時間帯があった。先輩の思いを背負って戦った経験は今に生きており、石倉同様、笑顔を絶やさずにプレーすることを心がけている。「周りの人を巻き込んで、1点1点を喜ぶ」がモットー。自身が得点を決めたときだけでなく、チームメートの好プレーが飛び出した際も全力で喜ぶ姿が印象的だ。チームの雰囲気をもり立てる姿勢を今大会も貫いた。