ドジャースの”悲劇”はいつまで続く…MLBで投手の故障者が続出、その理由と現状とは…?【コラム】
“剛速球“の有効性とリスクとは
故障の拡散を語る際に、最も問題にされるのが球速である。2023年シーズンに平均96.0マイル(約154キロ)以上のファストボールを投げた選手の中、23-24シーズンスパンで故障歴がないのはコール・レーガンズ、ルイス・カスティーヨ、ルイス・オルティス、ジョージ・カービィの4人だけだ。他の投手は何かしらの故障離脱をしており、その半分程度が手術による長期離脱を強いられている。 近年のメジャーリーグではピッチャーを評価する際に球速が重要な要素となる。これは球速を上げれば打者を抑えられる確率が加速度的に上昇するからだ。結果的にメジャー全体の球速は年々上昇しており、2007年に91.1マイル(約146キロ)だったフォーシーム平均球速は2017年に93.2マイル(約150キロ)を超え、今年は94.2マイル(約151キロ)となっている。 投手にとっての最優先事項は打者を抑えることであり、投手は少しでも球速を出すために自分の身体の限界を超えてボールを投げようとしている。これが肘・肩に大きな負担となり故障につながると考えられている。 ちなみに初回から全力で投げることは先発投手が4,5回あたりで降板することにもつながり、これが野球というエンターテイメント産業の価値を低下させているとする主張もある。 特殊な変化球が肘・肩の負担につながっているとする説もある。米メディア『The Athletic』の取材において、テキサス・レンジャースのチームドクターを務めるキース・マイスター氏はスイーパーと高速チェンジアップが肘に大きな負担を与えると指摘している。これらの球種の変化量を大きくするにはボールをしっかりと握る必要があり、この際に負担がかかるという。 問題は投手に球速や変化球を捨てさせるのは現行ルール上不可能であるという点だ。剛速球や大きく曲がる変化球は打者を打ち取るには非常に効果的だ。 界隈では先発投手に長いイニングを投げさせるためにDHと先発投手のリンクや6回以上投げさせなかったチームへのペナルティ、さらには投手枠の削減まで提案されている。『The Athletic』のジェイソン・スターク氏とケン・ローゼンタール氏は、一定球速以上や特定球種の禁止まで踏み込んで提案している。