「お父さんが治してやる」娘のためにゼロから“国産カテーテル”の開発に 世界で17万人もの命を救った医療器具の知られざる秘話とは
心臓の大動脈内で風船のように膨らんだり縮んだりして、心臓の動きを補助する医療器具「IABPバルーンカテーテル」。今や心筋梗塞の治療に欠かせないバルーンカテーテルですが、日本人に合う国産のものが出来るまでには、ある家族のドラマがありました。 【動画】開発に“8年” 実用化まであと少しのところで大きな壁が…!乗り越えるまでの苦難と当時の想いはこちら【3分20秒~】 ■“娘の命を救いたい” その一心で医療器具の開発へ 2024年6月14日(金)から公開されている映画「ディア・ファミリー」は、生まれつき心臓に障害のある娘を救うため、ゼロから医療器具の開発に取り組んだ父と家族の実話を描いています。 主人公のモデルは、愛知県春日井市の医療機器メーカー「東海メディカルプロダクツ」の筒井宣政会長。筒井さんの次女・佳美さんは生まれつき心臓に障害があり、当時の医学では手術が出来ないため、9歳で余命宣告を受けました。 ■「お父さんが治してやる」娘の命を救いたい (東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長) 「娘に『もう手術はやれないそうだから、死ぬまでそのままにしておきなさい』とは言えない。できるかできないかはともかく、お父さんが治してやると」 当時プラスチック製品を作る会社を経営していた筒井さんは、娘の命を救いたい一心で、自ら「人工心臓」の開発に乗り出しました。8年の時間をかけて実用化まであと少しにこぎ着けますが、大きな壁にぶつかります。 (東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長) 「そこまでで8億円を使った。(ここから動物実験などで)2000億円必要と言われても、家を売ることぐらいしかできない」 結局、筒井さんは人工心臓の開発を、断念せざるをえませんでした。しかし、人工心臓開発で培った技術をいかし、新しく心臓用のバルーンカテーテルの開発を始めます。当時は欧米人の体格に合わせた大きな物しかなく、日本人に使う際に医療事故も起きていました。 (東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長) 「うちの子の心臓は救えないのは、分かっていた。でも、ここまで10年やってきて、やめるのも。これを改善して作れば、絶対に生きていたのにという人が大勢いる。そういう人を救いたいというのもあった」