「お父さんが治してやる」娘のためにゼロから“国産カテーテル”の開発に 世界で17万人もの命を救った医療器具の知られざる秘話とは
■国産初のバルーンカテーテルが完成 「また、1人の命を助けることができたのね」 1989年、2年をかけて開発した国産初の「IABPバルーンカテーテル」が完成。佳美さんも完成を喜んでくれたといいます。 (東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長) 「『十分やってくれたから、私のことはもういい』と。私は経営者だから『(「IABPカテーテルを)一本使ってもらったよ。売れたよ』と言うが、あの子は全然違う。『また、1人の命を助けることができたのね』と言う。人の命をすごく大事にしていたから」 1991年、父親が開発したIABPバルーンカテーテルの成功を見届け、佳美さんは23歳で亡くなりました。娘の命を救おうとする努力の末に生み出されたカテーテルは、これまでに世界で約17万人の命を救っています。 5月29日。名古屋市内で映画「ディア・ファミリー」の公開記念イベントが行われ、筒井さんを演じた主演の大泉洋さんが作品について語りました。 (筒井さんを演じた大泉洋さん) 「大切な娘を失った家族の話ではなく、亡くなっていく娘との新しい約束『自分の命はいいから、技術を多くの人のために使ってほしい』という夢を叶えるために頑張った家族の話」 ■新たな医療機器の開発も 娘との約束は続く 東海メディカルプロダクツは、今も新たな医療機器の開発を続けています。2023年11月に開発した新製品「オプティマルワイヤー」は、脳に繋がる頸動脈がコレステロールの塊で狭くなる「頸動脈狭窄症」の治療に使う医療器具です。頸動脈を広げる際に、コレステロールの破片や血栓などが脳に入らないようするために使われます。 (愛知医科大学病院・宮地茂特命教授) 「風船のカテーテルはもともと外国メーカーが作っていたが、3年前に突然生産をやめた。バルーンといえば、東海メディカルプロダクツが素晴らしい技術を持っているので、ぜひやっていただけないかと(開発を依頼した)」 通常5年以上かかるといわれる医療機器の開発ですが、東海メディカルプロダクツはオプティマルワイヤーを約2年半で製品化しました。