自身も「きょうだい児」であるシェフが、障害児と家族をクリスマスに招く理由
「HAJIMARI」の始まり
米澤氏が2023年から「No Code」で実施している「HAJIMARI」は、彼の弟のように多動の症状が出やすい障がいや病気を持つ方や、その家族を対象にしたものだが、そもそも「HAJIMARI」は2022年に奈良県山添村の古民家をリノベーションした宿泊施設「ume, yamazoe」でオーナーの梅守志歩氏がスタートした取り組みだ。
梅守氏にも障がいのある姉がいる。だから「医療機器を身につけていると、周囲の目が気になってしまう」というような、障がいや病気を持つ家族の悩みは想像に難くなかった。そこで、家族の悩みをほぐし、楽しいと思える時間の選択肢を増やすために始めた無料宿泊招待が「HAJIMARI」の始まりだ。
米澤氏が「HAJIMARI」に参加したきっかけは、2023年に「HAJIMARI」のファンドレイジングイベントで梅守氏に出会ったこと。「さまざまな場所で支援活動を広げ、障がいや病気のある方々にやさしい社会を作りたい」という思いに強く心を打たれたという。
「現代は僕が子どもだった頃と違い、昔以上に外食が盛んです。外食に行きたいけれど、子どもに障がいがあるからあまり外食の機会を設けられない。そんなご家庭が存在することは、自分の体験から容易に想像できました」
そこで米澤氏は、自身のレストラン「No Code」で2カ月に一度貸し切りの日を設け、障がいや病気のある方とそのご家族を招待し、気兼ねなく外食を楽しんでもらう機会を作るようになった。たとえば胃ろうを使っている子どもにはピュレ状の食事を、家族には通常の料理を提供するなど、一人ひとりに寄り添ったサービスの内容は、入念な事前ヒアリングに基づいて考案されている。
「HAJIMARI」の未来
「No Code」の次回の「HAJIMARI」は、12月24日のランチとディナーだ。レストラン業界にとってかき入れ時であるクリスマスにゲストを無料で招待するというのは、大胆な決断のように見える。しかし、米澤氏にとって、クリスマスという特別な日に「HAJIMARI」を行うことには深い意味がある。このタイミングだからこそ、取り組みのインパクトを高め、人々の心を動かせると考えているのだ。クリスマスは多くの人に活動を知ってもらい、「HAJIMARI」の輪を広げる絶好のチャンスなのである。