バニラ、トマト、バジルの風味…… ナチュラルチーズ活況 デザートや朝食…ぜいたく感も演出
ナチュラルチーズにフレーバーを加えた商品の売り込みが活発だ。各乳業メーカーは輸入品の価格が高騰する中、国産ナチュラルチーズに注目。バニラやトマト・バジルのソースなどを加えた商品で、ぜいたく感を演出したり、デザートや朝食などで提案したりして、消費場面を広げている。 【画像】パンに塗ってピザ風味を味わえるチーズペースト チーズはナチュラルチーズとプロセスチーズに分類される。ナチュラルチーズとは、牛やヤギから搾乳した乳を凝固させたものから、液体成分のホエー(乳清)を取り除いたもの。ナチュラルチーズを加熱処理したものがプロセスチーズとなる。 乳業メーカーでは、国産ナチュラルチーズを使った商品を売り出し、チーズ消費機会の拡大をめざす動きが出ている。 雪印メグミルク(東京都新宿区)は、北海道産生乳を100%使用したマスカルポーネチーズにソースを混ぜて味わうデザートチーズ「雪印北海道100マスカルポーネドルチェ」(100グラム、希望小売価格295円)を3月から販売する。 生クリームのようにクリーミーで滑らかなマスカルポーネチーズに、バニラソースとアールグレイソースを混ぜる2種類を展開。マスカルポーネチーズはティラミスの材料として使われることが多い。同社調査によると「そのまま食べる」が23%に上り、そのまま食べることでぜいたく感を得たいとする消費者のニーズを捉えた。 よつ葉乳業(札幌市)は国産ナチュラルチーズを使ったチーズフード「北海道十勝チーズペースト トマト&バジル」(100グラム、318円)を売り出す。北海道十勝産の乳原料を使用したチーズにトマトバジルソースを混ぜ込み、イタリア風味を表現した。冷蔵庫から出した瞬間からパンに塗って食べられるため、簡便で時短な商品として売り上げを伸ばす。 同社は「家庭での利用頻度が高いカマンベールチーズなどは消費者の価格感応度が高いことから、販売の増減は価格の影響を大きく受ける」という。一方で、クリームチーズなどは「差別化商品の開発で、安定的な販売実績につながる」と展望する。 農水省によると、2023年度の国産ナチュラルチーズの生産量は4万5146トンと13年度と比較して11%増加した。うちプロセスチーズの原料用は13年度比が9%減であるのに対し、ナチュラルチーズとして消費される分の生産量は2万1769トンで同5割増加した。 日本農業研究所の矢坂雅充氏は「消費動向は、プロセスチーズからナチュラルチーズにシフトしている」とする。さらに、円安による輸入チーズの価格高騰で国産品と輸入品の価格差が縮まっていることから、「国産品の付加価値を高めて売り出す動きは続く」とみる。(廣田泉)
日本農業新聞