夏の奄美大島でしか見られない 2mの海底ミステリーサークル!? 〈世界自然遺産の遊びかた〉
#299 Amami-Oshima奄美大島(鹿児島県)
沖縄本島と鹿児島のほぼ中間に位置する奄美大島。周囲約461キロメートル、面積は約712平方キロメートル。沖縄本島、佐渡島に次ぐ国内で3番目に大きな島です。 【画像】春から夏、海底にミステリーサークルを描く犯人は…? 島の南北は、約90キロメートル。ただし島はその8割を山間部が占めているため、島を車で一周しようとすると、約6時間半もかかるとか。想像以上に大きな島です。 中心地は、ビルやちょっとした繁華街もある中部の名瀬。南端の瀬戸内町まで下ると、複雑に入り組んだリアス海岸が広がり、風景ががらりと変わります。 そして中南部は奄美群島最高峰の湯湾岳(海抜694メートル)を中心に外国のジャングルのような、国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がっています。 もともとはユーラシア大陸の東端の一部だった奄美群島。地殻変動により大陸から徐々に切り離され、島に取り残された動植物たちは独自の進化の道をたどりました。 そのため、奄美大島を含む奄美群島は日本の国土のわずか約0.3%ながら、そこに日本全体の約16%もの生物種が暮らしています。アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなど固有種も生息し、その多くが絶滅の危機に瀕した希少種でもあります。 そんな動植物の多様性と貴重な固有種の多さなどから、2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録されました。 今回はそんな奄美大島の海・森・川、それぞれの豊かな自然についてご紹介していきましょう。
春から夏の海底に描かれるミステリーサークル
4~7月の奄美大島の砂地の海底にはミステリーサークルが現れるのをご存じですか? それは奄美大島の沖合、水深10~30メートルの砂地の海底に、小潮~大潮にかけて作られ、大潮前の中潮のときが最もきれいなサークルが見られる砂の造形物。直径は約2メートル、溝とウネが連続する同心円の中央に、放射状に波模様が描かれていて、ちょっとしたサンドアートのようにも見えます。 これは30年ほど前に発見されたのですが、「誰が? どうして?」と、謎に包まれたままでした。それが2011年、ついに判明したのです。 その正体は、体長10センチほどのアマミホシゾラフグのオスがせっせと築いた産卵床。 オスは産卵床が完成したら、少し離れたところでメスを待ちます。めでたくカップルとなり、サークルの中心でメスが産卵すると、オスは卵を守ることに専念します。管理されなくなった産卵床は、すぐに崩れてしまうそうです。 産卵床は砂地にあるため、砂を巻き上げないよう中性浮力が取れる中級以上のダイバーならば、実際に潜って観察することもできます。ちょっとトボけた顔のアマミホシゾラフグと美しい幾何学模様の産卵床は、春から夏にかけての海のハイライトです。 ちなみに、アマミホシゾラフグは米国のニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所が選ぶ、2015年の「新種トップ10」に選ばれたそうです。 ダイビングサービス ブルーゲイト