なぜ危険が迫っても逃げないのか 平成30年7月豪雨の検証を
西日本を中心に死者・行方不明者232人(10月9日時点)を出し、平成で最悪規模の豪雨災害となった「平成30(2018)年7月豪雨」。気象庁や地方自治体が、水害や土砂災害に関する情報を早い段階から発表していたにも関わらず、ハザードマップなどで土砂災害や浸水のリスクが高いとされていた地域で多くの死者が発生した。 国は「我々の危機感が必ずしも適切に伝わっていなかった」(気象庁)、「各種災害情報が住民の危機感に結びついていない」(国土交通省)といったことなどを課題として、専門家による「平成30年7月豪雨による水害・土砂災害からの避難に関するワーキンググループ(WG)」を中央防災会議の下に設置。16日、都内で第1回の会合を開いた。さらに年内に数回開催し、防災気象情報と避難情報の連携などについて議論していくという。 しかし、これまでも大規模な豪雨災害が発生するたびに、同様の取り組みは何度も繰り返されてきた。災害に関する情報を出す側が、不断の努力によって、より良い情報にしていくことはもちろん重要だが、根本的な解決にはつながらないと考える。 一人一人の住民が「なぜ避難しない(できない)のか」という理由を、詳細に洗い出すことが今、必要なのではないか。
危険が想定されている場所に、危険が迫る情報が出ていたが…
内閣府防災がWGで提示した資料によると、河川の氾濫で50人を超える犠牲者が出た岡山県倉敷市真備町地区の浸水範囲は浸水想定区域とほぼ一致していたという。また、土砂災害による死者119人(53カ所)中、被災位置が特定できた107人(49カ所)について調べると、約9割に当たる94人(42カ所)が土砂災害警戒区域かそれに準ずる区域で被災していた。 そして、こうした地域では、災害発生前に大雨や洪水に関する情報や土砂災害警戒情報といった防災気象情報や、地方自治体の避難勧告といったさまざまな情報が発表されていたことも明らかになっている。 つまり、危険が迫っていることを知らせる様々な情報が、事前に危険が想定されていた地域に発表されていたにも関わらず、被害に遭った人が少なくなかったということが分かる。