なぜ危険が迫っても逃げないのか 平成30年7月豪雨の検証を
重要な課題に位置付けられる災害情報のあり方
平成30年7月豪雨については、中央防災会議のWGだけでなく、国土交通省、農林水産省、気象庁などが、洪水対策、土砂災害対策、治山対策など具体的な課題に取り組んでいる。 中でも、災害情報のあり方は重要な課題に位置付けられている。例えば、国交省が今月からスタートした「住民自らの行動に結びつく水害・土砂災害ハザード・リスク情報共有プロジェクト(PJ)」もその一つだ。国、自治体などと情報伝達を担うメディア関係者を集め、1)よりリアリティのある情報を個々の住民にどのように届けるか? 2)住民が行動するきっかけを与える情報はどのようなものがよいか? 3)住民に直接伝えるチャンネルとなる多様なメディアと国が連携した新しい取り組みとして何ができるか? ── などを課題に、参加者の連携策をとりまとめようとしている。 また、このPJに参加する気象庁は16日、防災気象情報の伝え方に関する専門家による検討会(検討会)を設置すると発表。注意報、警報、特別警報に加え、記録的短時間大雨情報や土砂災害警戒情報といった防災気象情報を発表する気象庁は、さらに昨年からは土砂災害、浸水害、洪水の危険性を色分けして伝える「危険度分布」情報の提供も始めた。気象庁は「こうした情報をより分かりやすくシンプルに伝えるための方策を検討したい」と説明する。
これまでに何度も防災気象情報や避難情報の改善は進められてきた
しかし、防災気象情報や地方自治体が発表する避難情報の改善に取り組むのは、今回が初めてではない。近年、大規模な豪雨災害が発生するたびに、中央防災会議や気象庁などに専門家による検討会などが設置され、何度も情報に改良を加えてきた経緯がある。 例えば、市町村が避難勧告等の発令基準や伝達方法、防災体制を検討する際の参考になる「避難勧告等に関するガイドライン」というものがある。「自治体が避難勧告を出すタイミングが遅かったのが被害拡大の原因だ」との指摘があれば、空振りを恐れずに早めに避難勧告を出すよう改定された。「高齢者施設が被災して入所者が亡くなったのは、避難準備情報という言葉の意味が分かりづらかった」などの指摘を受けた後には、避難準備情報が「避難準備・高齢者等避難開始」に、従来の避難指示も「避難指示(緊急)」に名称変更された。 また、平成30年7月豪雨の時に11府県に発表された特別警報もこうした改善策の一つ。今から約5年前に、気象庁が今回も課題に挙げた「危機感が十分に伝わらず、必ずしも住民の迅速な避難行動に結びつかない例があった」ことを理由に新設されたものだ。