クッション→ライフジャケット? 3・11後に開発「浮くっしょん」 今年から寄付始めた理由
11月5日は、津波防災の日です。 津波が起きたとき、避難経路を把握していても、津波が想定以上に早く到達したときなど、「逃げ遅れる」心配があります。そんなときに、生活空間に常にライフジャケットがあれば――。津波によって多くの犠牲者が出た東日本大震災を機に開発された、「身近に置いておけるライフジャケット」を取材しました。 【画像】クッション→ライフジャケットの姿はこちら
「浮くっしょん」、自治体にも寄付
津波によって多くの犠牲者が出た東日本大震災を機に、アウトドア用品大手「モンベル」(大阪市)では、「身体の近く、または身近な生活空間に置いておけるライフジャケットを」と商品を企画。学校など子どもが多くの時間を過ごす空間で被災した際に役立つものをと考え、普段はクッションとして使いつつ、災害時にはライフジャケットに変身する「いすのクッション」を開発しました。 名前は「浮くっしょん」。 東日本大震災の記憶がない子どもたちも増える中、「防災意識を見直すきっかけに」と同社では10月から複数の自治体に「浮くっしょん」の寄付を始めました。 すでに寄付を終えたのは南海トラフ地震で津波の発生が想定される愛媛県愛南町、高知県四万十市、和歌山県串本町。さらに、千葉県や高知県、石川県など全部で10の市町に、合計1800着(すべてキッズサイズ)を寄付する予定です。そのほとんどが南海トラフ地震での津波被害が想定されている沿岸部です。 寄贈を受けた自治体からは「図書館や学童保育の施設に設置する」といった声もあるといいます。
会員からのファンドが原資
同社では、アウトドアを通じて社会課題を解決するという目標があり、それを実現させるために、現在116万人いる、会報などが送られる会員の年会費1500円のうち、50円を「モンベルクラブ・ファンド」として預かり、社会貢献事業に使っています。 今回の「浮くっしょん」の寄付の原資もファンドからの支出になっているため、担当者は「モンベルからの寄付というよりも、会員の方による寄付というかたちになっています」。 「『浮くっしょんを』を被害が想定されるところの住民が持っていただいてたら、津波被害に遭った際に命が助かるかもしれません」 正しく着用すれば浮力が確保できるため、体力温存にも有効といえるライフジャケット。担当者は「『浮くっしょん』や、海水浴用のライフジャケットなど、日頃から身近にライフジャケットを置いておいてもらえると、いざというときに役立つのではないでしょうか」と訴えます。
なんで11月5日が「津波防災の日」?
2011年の東日本大震災を教訓として同年6月に制定された「津波対策の推進に関する法律」。この法律で、11月5日は「津波防災の日」とされています。 内閣府によると、11月5日は「この日は、安政元年11月55日の安政南海地震(M8.4)で和歌山県を津波が襲った際に、稲に火を付けて、暗闇の中で逃げ遅れていた人たちを高台に避難させて命を救った濱口梧陵の逸話にちなんで定めらた」とのことれました」。