人が辞めていく職場は「飲み会の幹事を若手に押し付ける」。では、人が辞めない職場はどうしている?
● 幹事を持ち回り制にする まず、もっともシンプルな方法から。特定の人たちに幹事役を押し付けるのではなく持ち回りにしてみる。あるいは部課長が幹事役を務める宴会やイベントがあってもよい。 事例紹介:社長や部長が屋台を出して新入社員を歓迎する企業 株式会社ラクーンホールディングス(東京都中央区)が毎年開催している新入社員歓迎会では、社長や部長、先輩社員が屋台を出して、新入社員に料理を振る舞う。最後には投票でベストな屋台を決めるエンターテイメントぶり。ユニークかつ面白い組織文化である。 もちろん、若手のなかにも幹事役や盛り上げ役が好きな人、率先してやりたい人もいる。若手には幹事をやらせないと決めてしまうのも極端だ。本人たちの声や意向を尊重した上で幹事役を決めたいものである。 ● 宴会の運営を外注する 宴会の幹事や社内イベントの企画をプロに外注するのも手である。 発注の手間やコストは発生するものの、細かな調整やお店の手配、集金、支払いなど幹事の雑多な業務からかなり解放される。会社の予算を使い、参加者の自己負担をゼロにすれば(または軽減すれば)、宴会やイベントへの参加率も大幅に向上する。 お金をかけて良い場をつくる意識や空気を創るのも重要だ。より良い仕事をするための環境づくりと考えたら、組織がそこに投資するのは何らおかしな話ではない。より良い職場環境を創るための投資を惜しまない。その文化づくりのきっかけにもなる。 ● やり方を変える選択肢も持っておきたい お金はかけたくない。準備の手間も減らして手軽に懇親を図りたい。ならば夜の宴会ではなく、ランチタイムや日中時間に軽食を囲む懇親スタイルに変えてしまうのも手だ。 株式会社NOKIOO(静岡県浜松市)は定期的にランチピザセッションを実施している。文字通り、ランチタイムにピザをつまみながら社員同士および社外のゲストを招いて懇親と相互理解を明るく図っている。 昼に開催するメリットは他にもある。 ・時短勤務の人、業務時間外のイベント参加が厳しい人も参加可能 ・アルコールが苦手な人、クルマ通勤者の参加ハードルが下がる ・お財布事情が厳しい人にも優しい 羽目を外しすぎた人がトラブルを引き起こすリスクも減らせる。社員間の交流が目的であれば、「夜に」「お酒を飲みながら」は絶対条件ではないはずだ。本来の目的を再確認して、宴会以外の選択肢も増やしたい。 ● 「フィーカ」を実践してみる 北欧・スウェーデンには「フィーカ」と呼ばれる慣習がある。甘いものでもつまみながらお喋りを愉しむコーヒーブレイクのことで、職場でも根付いている。筆者もスウェーデンで仕事をしていたときに体験したが、リフレッシュを兼ねたメンバー同士の懇親にもなり、その後の仕事にも集中できた。 あなたの職場でもフィーカを実践してみてはいかがだろうか。リモートワーク併用の職場であれば、オンラインでつないでそれぞれの部屋でコーヒーとお菓子と対話を愉しむのもよい。 ● いっそのこと、やめてしまうのもアリ いっそ宴会をやめてしまうのもアリだ。そうすれば幹事業務そのものがなくなる。とはいえ、こんな声が聞こえてきそうだ。 「それでは業務時間外のコミュニケーション機会がなくなってしまう」 たしかに業務外の色を帯びたコミュニケーションの機会も大切にしたい。 それなら、社内勉強会や読書会を企画するのはどうだろう。オンライン開催にすれば飲み会には参加できないリモートワーク勤務者や、地方都市の支社勤務の人たちの参加ハードルも下がる。他にもチームビルディングを兼ねた業務合宿など、業務の色を持ちつつ職場の相互理解や人間関係構築に寄与するような仕組み・仕掛けを取り入れるのも効果的である。 いずれにせよ、宴会やイベントの本来の目的に立ち返り、従来の方法を踏襲するのではなく、さまざまな手段を選んで活用できるようにしたい。 一歩踏みだす! ・幹事役を固定せず、持ち回りにしてみる ・企画や運営を外注することも考える ・宴会や夜のイベント以外の選択肢も提案してみる (本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です) 沢渡あまね(さわたり・あまね) 作家/企業顧問/ワークスタイル&組織開発/『組織変革Lab』『あいしずHR』『越境学習の聖地・浜松』主宰/あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/プロティアン・キャリア協会アンバサダー/DX白書2023有識者委員。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『職場の問題地図』(技術評論社)、『「推される部署」になろう』(インプレス)など著書多数。
沢渡あまね