「現役ライダーはノリックから学ぶことがあるはずだ」Racing adviser・解説者 辻本聡さん
「大排気量車でも日本は世界と戦える」。ノリックが示した新たな時代
ノリックがWGPを走るまでは、WGP125では坂田和人がチャンピオンになり、上田昇や若井伸之らが活躍、青木治親もタイトルを獲得している。1993年にWGP250で原田哲也もタイトルを獲得しているが、日本人は速いけど、小排気量のイメージが強かった。そこに、伊藤や岡田もGP500で走ったけど、ノリックが最高峰クラスで活躍して「日本人は大排気量でも活躍できるんだ」と示し、新しい時代を連れて来たように思う。 現役ライダーは、ノリックのことを知ったほうがいい。レースに賭ける思いの強さ、自分の走りでWGPの切符を手に入れた。「I‘m Norick」って自信満々に生きた。自分にプレッシャーを賭けて、それを糧に生きて、走りも豪快だったけど、生き方もそうだったなと思う。ノリックみたいに突き抜けないとチャンスなんて掴めないと思う。 帰国してからは会う機会が増えた。電話が来て、着信に名前が残っていて、そのままにしておくと怒られた。「俺はお前の彼女でも恋人でもないよ」って思っていたけど、すぐ連絡するようになっていた。日本のレース界のことも一緒に考えてくれるようになって、大人になったな、頼もしいと思っていた。 事故にあう直前は、俺の家にいた。来たばかりのスクーターを自慢しにやって来て、オレンジジュースを飲んで、メロンを食べて、また、くだらない話をして「もう、暗くなるから、気を付けて帰るように」と言って、スクーターで走り去るノリックを見送った。もっと、早く帰せば良かった。もう少し、引き留めておけば良かった。そうしたら、事故にあうことはなかったのかな…。今でもその思いが消えない。
佐藤洋美