ラーメンの進化は師弟のパスが美しく繋がれてこそ
日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。 【まとめ】山本益博のラーメン革命!
2015年のワールドカップで日本が優勝候補の南アフリカを破ったことをきっかけに、ラグビーが大人気である。2019年には日本が開催地となった。私も豊田まで試合を観に出かけたほどだ。 ラグビーはルールが複雑なのだが、最もシンプルで大切なことは、ラグビーの楕円のボールを味方にパスする時、選手は後ろにボールを投げなくてはならない。自分より前に出ている選手にパスすると「スローフォワード」という反則を取られてしまう。 端的に言えば、ボールを持った選手の後ろで受け取り、受け取った選手はボールをパスしてくれた選手の前に進んでトライを目指すのだ。 私は、このルールを知った時、師匠と弟子の関係をそのまま表していると思い、ラグビーがますます好きになっていった。
昨年暮れ「ミシュランガイド東京2024」が発刊され、3年ぶりに3つ星が誕生した。それが、銀座の鮨「青空(はるたか)」だった。主人の高橋青空さんは、銀座「すきやばし次郎」で12年修業し、その後独立して、今の地位を築いた。 職人はどこで学んだかがとても大切だが、いまや、青空さんが来年百歳になろうかという小野二郎さんの職人スピリットを見事に受け継いでいることを世間に認知してもらったようなもので、二郎さんからパスされたボールをノックオン(ボールを前に落とすこと)せず、トライ目指して前進している様はなんともカッコいい。
ラーメン界に眼を転じると、ここにも「第2の青空」がいるのを実感する。一昨年秋、岐阜へ出かけた時、岐南町まで足を伸ばし「麺 㐂色(きいろ)」で食べると、主人分部さんの師匠、浅草橋「饗 くろ㐂」の黒木さんの顔が思い浮かんだほどだった。