「猫って、すごい」フリーライターが驚いたパワフルな野犬も一目置くボス猫コタロウが個人シェルターで発揮する包容力
初代から役を受け継ぐ
動物の共同生活で、いいリーダーがいることは必須だ。シェルターを始めるきっかけとなり、初代リーダーとなってくれたのは、センターの最終部屋にいた柴犬の「このは」だった。 彼女の老年期に、シェルターにやってきた初めての猫であるコタロウを、このはは慈しんで育てた。このはが亡くなる直前まで、コタロウは添い寝をして介護を尽くした。 このはからシェルター長を引き継いだコタロウは、天職とばかり、みごとな働きぶりを発揮する。威厳があるが威張らず、分け隔てもないので、野犬の子たちが一目置くのだ。 センターにいた柴犬の「こみみ」がやってきてからは、リーダーはふたり体制となったが、毅然たるシェルター長としての貫禄はコタロウだけのものだ。
厳しいしつけも
コタロウは、シェルターとしている居間のある1階と、2階とを自由に行き来している。ゆっくり寝たいときは次男の部屋などにいるが、たいていは、犬たちの真ん中でどっしり構えている。周りがどんなに騒がしくとも、全く動じない。 「どんな犬が来ても猫が入って来ても、すべて受け入れますね。子猫が来たら、遊び相手も添い寝もします。犬も猫も相手が小さいうちは高いところから垂らしたシッポを揺らして遊ばせてやります。子犬が甘噛みして遊んでも全然怒りません」と、紗由里さん。 ところが、卒業までの教育も請け負うシェルター長の面目躍如たるところは、子犬たちに「行き過ぎ」があった場合だ。痛いほど噛むと、「いい加減にしなさい」「それ以上やると怒るよ」と、にらみつける。その眼力だけで、相手は目を伏せる。机の上の食べ物を取ろうとするなどのお行儀の悪いときも同様だ。 高い座にいて、下のほうで犬たちのふざけが過熱しすぎて一触即発になりそうなときがある。雲行きを察したコタロウは、悠然として真ん中に降臨する。一瞬にして座を鎮め、「ボス、遊んで、遊んで」と追いかけられる役を買って出るのだ。 「犬猫の種を超えて新入りを可愛がり、教育し、愛情を循環させていく。本当にすごいと思います」と、紗由里さんも日々感動の連続だ。