片岡千之助「大河ドラマは歌舞伎と同じく日本の文化。台本を読んでびっくりしたシーンは…部屋のセットは落ち着きます」
◆光源氏に似ているとされる敦康親王 <敦康親王は、一条天皇(塩野瑛久さん)と定子(高畑充希さん)の第一皇子。定子の亡き後、藤原道長(柄本佑さん)の長女で一条天皇のもう一人の后・彰子(見上愛さん)の元で養育され、母代りの彰子を慕うようになる。源氏物語の主人公・光源氏も幼くして母を亡くし、藤壺の女御を母代わりと慕って育つ。天皇の子でありながら不遇な境遇に置かれるところなども光源氏に似ているとされる。『光る君へ』の主人公、まひろ/紫式部(吉高由里子さん)は彰子に仕え、『源氏物語』(主人公は光源氏/光る君)を執筆する> みんながみんなそれぞれに、「光る君」や「光源氏」のイメージがあるでしょう。僕は、大和和紀さんが『源氏物語』を漫画化した『あさきゆめみし』をちょうど読んでいました。『あさきゆめみし』と大石静さんの『光る君へ』の台本のいろいろなシーンがリンクしているところがあったので、光源氏とつながっているのでは、と思い、演じました。 僕の出演前、彰子が幼い敦康親王にお菓子をあげる場面があるのですが、これまで笑わなかった彼女が笑顔を見せます。そのたったワンシーンで2人にしかないつながりが感じられました。 敦康親王と彰子の関係は、小さい子供が年上のお姉さんを慕うというだけでなく、好意もあるなどいろいろなとらえ方があるでしょう。僕の中の一つの答えは、恋愛感情もあったかもしれないけれど、それ以上に、何よりも彰子から注がれた愛情をちゃんと感じて、それに何とか応えようとする気持ちが敦康親王にはすごくあるということです。せりふの端々から感じました。
◆台本を読みびっくりしたシーン <『源氏物語』では、光源氏と藤壺は男女の関係になる。『光る君へ』の敦康親王は彰子より10歳年下。「もしかしたら」「一線を越えてしまうのでは」と見るものの心をざわつかせる場面がある。第39回では、元服前日、挨拶に訪れた敦康親王と彰子の様子を見て、道長が「もはや危ない。光る君の真似なんぞされては一大事」と警戒したほど。第41回。彰子から手紙をもらった敦康親王が飛んでくる。「せっかく参りましたのにお顔が見えませぬ」と御簾を押しのけて彰子に近づく――。あの時代、普通では許されないことである> 僕は、敦康親王が御簾を超えて彰子に近づく場面に思い入れがあります。台本を読んだ時には「超えた!」とびっくりしました。御簾を超える瞬間は、御覧になっていだけると分かると思いますが、「うわあ」という感じ。その場にいたまひろや藤原行成(渡辺大知さん)でさえ、「え?!」となるみたいなシーンです。 そして「光る君のようなことはいたしませぬ。ただお顔が見たかったのです」という一言。本当に純粋なのです。飾ることなくずっと一心に生きてきて、誰より信頼している人、ある意味愛している人に御簾越しで会わなくてはならない現実をつきつけられたのがきつかったのだと思う。元服して離れなくてはならなくなったけれど、ひたすら大事な人の顔を見たい一心で御簾の中に入り「お顔を見たかっただけです」。彰子の顔を見てほっとする純粋な気持ち。僕は、その言葉通りに純粋にストレートにやりたいと考えていたので、自然に演技ができました。 彰子の見上さんのお芝居も、目を見た時にやさしさが伝わってくる。それにお応えするだけでした。見上さんが演じられた彰子のやさしさすべてに受け止めて頂きました。 (構成=山田道子)
片岡千之助
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