「人の脳年齢は1日眠らないだけで老化」は“真実” 「神経細胞は一度死んだら戻らない」は実はウソ
■睡眠不足は「孤独」にも関係する? これからの人間の健康には、単に平均寿命が長いだけではなく、幸福感や満足度の高い生活、いわゆるウェルビーイングが、大きな課題です。孤独や社会的孤立は、喫煙や運動不足、飲酒よりも、死亡率やウェルビーイングに悪影響を及ぼします。 睡眠不足と孤独、社会的孤立の間には、双方向の関係があることが注目されています。 睡眠不足の人が、見知らぬ人が自分に向かって歩いてくるビデオクリップを見たときに脳スキャンをとると、人間がパーソナルスペースを侵害されたと感じたときに活性化する神経ネットワークが活性化し、強い拒否感が見られました。それだけでなく、睡眠不足は、社会的関与を促す脳活動も鈍らせてしまうという結果が出ました25。
睡眠不足になると、外見からも他人から敬遠されるようにもなります。睡眠不足によって強まる社会的孤立傾向も、脳の老化を促進している可能性大です。その意味で、脳を若々しく保っておくことは、非常に重要です。 そのためにも、その人に合った十分な睡眠時間の確保や、あるいは睡眠時無呼吸症候群などの早期発見と治療などが、より大切になってくると思います。 [註5]人のニューロン新生については、動物実験と同程度のニューロン新生があるという説が有力であった。しかし、近年において、人でのニューロン新生は極めて少なく、一定年齢で止まると結論する論文もあり、人間でのニューロン新生については結論がまだ出ていない。
⑫Kempermann, G., Gage, F. H., Aigner, L., Song, H., Curtis, M. A., Thuret, S., Kuhn, H. G., Jessberger, S., Frankland, P. W., Cameron, H. A., Gould, E., Hen, R., Abrous, D. N., Toni, N., Schinder, A. F., Zhao, X., Lucassen, P. J., & Frisén, J. (2018). Human Adult Neurogenesis: Evidence and Remaining Questions. Cell Stem Cell, 23(1), 25-30. https://doi.org/10.1016/j.stem.2018.04.004