湯崎英彦・広島県知事に聞く(全文1)人口対策“故郷で錦を織る”発想へ転換
広島で暮らすことが“かっこいい” 広島ブランドの認知図る
── 実際に人口減少期に入った、という意味で、今の日本の社会システムは、人口を維持する限界に来ているという向きもあります。そこで新しい時代への準備期間というところで考えている部分はありますか。例えば人づくりの施策など、広島県の注目部分だと思いますが、今のシステムの問題と新しい時代への仕掛けとして考えがあれば聞かせてください。 一つは、この地域の魅力を高めるということが、まず重要なことですよね。特に、個別の県とか地域で見た場合には、人口動態、自然増減と社会増減があるわけで、社会増減が社会減になってしまったら、せっかくの自然増の施策も打ち消されていくということになりますので、そういう意味では、一つは、働く場所を確保していくということです。 特にわれわれが目指しているのは、広島県は「イノベーション立県」というのを目指しているわけですけれども、クリエーティブな仕事であるとか、付加価値の高い仕事、そういう仕事をたくさんつくっていくことによって、クリエーティブな仕事にひかれるような人たちが広島県に来て、定着をしてもらうというようなことも進めていきたいなと思っています。 もう一つは、イメージですね。この転換をしていかなければいけないと思います。そのためには、今の働く場、イノベーションとか先端技術、現時点においてもたくさん蓄積しているところですけれども、そういうものを地域のブランドというか、ブランドというのはなかなか難しい表現ですけれども、どういうふうに世の中に認知されるか、というものの中に入れていくということですね。地方・広島県で暮らすということが、一言でいうと“かっこいい”、というようなイメージをつくっていく。もちろん全ての人にそれを訴求する必要はないですけれども、一定の人にはそれを訴求するといったようなことをつくっていきたい、そういうブランドをつくっていきたいなと思っています。 われわれ、一つは、今のような先端産業が集積しているということがありますが、「豊かな食がある」ということとか、あるいは「平和への思い」、それから「自然と都市が近い」というところ、こういったところを広島の特徴として、ブランドとして確立できたらなと。 従来、今でもそうですけれども、地域にいて、地方で育って、東京へ出て大成する、みたいな、故郷に錦を飾る、みたいな。故郷に錦を飾る。最初から「故郷で錦を織ればいいじゃないですか」、という話で、その概念、いわゆる故郷に錦を飾るという概念自体を転換していかなきゃいけないと思いますね。これはなかなか、われわれだけでは難しいところもありますけれども、これはメディアの皆さんにも大きな影響力があると思うんです。ドラマでも、何かあると「東京に出ていこう」という。東京でかっこいい暮らしをするみたいな、そういうイメージづくりをしているじゃないですか。