トヨタ自動車が大会最多に並ぶ7度目V 先発3試合で24イニング1失点の増居翔太がMVP
◇第49回社会人野球日本選手権決勝 トヨタ自動車3―0Honda(2024年11月9日 京セラD) 決勝戦が行われ、トヨタ自動車がHondaを3―0で制し、2022年以来2年ぶり7度目の優勝を決めた。優勝回数は住友金属に並ぶ史上最多となった。先発左腕の増居翔太投手(24)が147球で7安打完封勝利を挙げ、最高殊勲選手賞に選出された。 大会を通して輝きを増した増居が、決勝の大舞台でまぶしく光った。「膠着(こうちゃく)した展開は中継ぎに負担がかかる。僕が行くべきだと思っていました」。8回終了時で球数131球も、強力な救援陣の力を借りることなく3―0の9回も続投した。そして2死無走者から右飛で締め、登板2試合連続完封で日本一を達成。歓喜の輪の中心で、ようやく笑顔を見せた。 常勝を掲げるチームにとって、分岐点となる大会だった。16年都市対抗を優勝に導いた「ミスター社会人野球」佐竹功年氏が今夏限りで引退して迎えた全国大会。藤原航平監督は「佐竹の引退は、とても大きなこと」と明かした上で強調する。「でもそのことをずっと考えてやってきましたから」。18年12月に監督に就任すると、佐竹を抑えに配置転換。積極的に若手を先発起用しながら、次代のエース育成に着手した。そして、現在28歳の嘉陽宗一郎を社会人を代表する投手に育てた。 今大会でも将来への一手を打った。それが増居の起用法だ。1回戦の先発投手を主戦の嘉陽ではなく、入社2年目の左腕に託した。藤原監督は「来年以降も見据えれば、増居も柱にならないといけないですから」と説明する。世界的企業として会社が新たに掲げる「継承と進化」をチームづくりにも反映させ、勝利と育成の両立を目指した。その進化の象徴と言える増居が全5試合のうち決勝を含む3戦に先発し、24イニング1失点(防御率0・38)と才能を花開かせた。 「初戦の先発を任せてもらい、一定の信頼をしてもらえた。その期待に応えたいと思ってきました」。チームとして、22年日本選手権、23年都市対抗、そして今大会と3年連続で2大大会の頂点に立っている。若手の成長を促す土壌を原動力とし、常勝への道を加速させる日本一となった。 (河合 洋介)