映画とは別物でも同様に恐ろしい 原作小説「関心領域」を読み解いた
アカデミー賞受賞が証明した音の演出
このように原作と映画では内容が異なるものの、どちらも残酷な状況を平然と扱う登場人物の異常性をどう受け止めれば良いのか分からなくなってしまう。同じ効果をもたらしているのは、それぞれの媒体特性に適したアプローチがなされたためではないだろうか。 その証拠に、映画「関心領域」は音による演出が評価され、第96回米 アカデミー賞で音響賞を獲得している。すでに映画をご覧になった方でも、「音」に注目し、原作小説において「音」がどのように表現されているのか気になったという方も多いだろう。 小説及び映画「関心領域」は、虐殺の場面を、直接的に見せないという類いまれな切り口で表現したというだけでなく、その両方を楽しむ組み合わせの中でも、独創的な存在感を放っている。
ライター 芦田央