どの回に視聴者がクギづけになったのか丸わかり

『虎に翼』放送話別クギづけランキング

ＮＨＫ連続テレビ小説『虎に翼』が、９月28日のダイジェスト版で放送を終えた。女性の社会進出や法律の在り方など、硬派なテーマながら空前の大当たり。なかでも視聴者が本当に注目した放送話を調査すると、意外な結果が判明した――。 滝藤賢一、戸塚純貴、尾碕真花らが大集合！打ち上げ写真と共に振り返る『虎に翼』の愛しき人たち テレビをつけているだけで上がる視聴率ではなく、見る人がどれだけ画面にクギづけになったかという「注目度」（注視率）で同作を分析した企業がある。テレビの視聴データ分析会社『ＲＥＶＩＳＩＯ』（以下、Ｒ社）だ。Ｒ社の独自調査により最近５作品の朝ドラと比べても、『虎に翼』の注目度が高いことがわかる（調査対象は全130話の内９月７日放送分まで）。Ｒ社の広報／マーケティング担当・安武早織氏が語る。 「ドラマは自分事として感情移入できるかが、注目度の高さを左右します。『虎に翼』は学生から裁判官へ成長する主人公・寅子(ともこ)（伊藤沙莉(さいり)）の姿が共感を呼び、性別や年齢問わず注目度が高い。経営者や役員など、エグゼクティブな男性の注目度が高かったのも特徴の一つです。現代に求められる女性リーダー像とは何かを、物語を通じて考えたのでしょう」 Ｒ社による注目度の調査方法について説明したい。安武氏が続ける。 「視聴者がどれだけテレビ画面を見ていたかで測ります。一般家庭のテレビにセンサーを設置し、視聴者の骨格が画面を向いているかを測定。テレビの前にいる100人のうち70人が画面を見ていれば、注目度は70％になります。他の作業をしながらの『ながら見』では、視聴率は高くても注目度は上がりません。（表に掲載した）視聴率も弊社が独自に調査しました。現在、計2600世帯（約6300人）ほどにご協力いただいています」 ◆家庭と仕事の両立に苦悩 『虎に翼』の放送話別の注目度ランキングを、個別にみてみよう。１位の76話（７月15日）をはじめ７月放送話が、上位10位以内に４つもランクインしていることがわかる。Ｒ社のカスタマーサクセス担当・青柳汰一氏が解説する。 「７月の放送話は、舞台が東京から新潟に変わり新しい登場人物も多数出てきます。新潟の裁判所で初めての女性支部長となった寅子が裁判官としてモチベーションを高める一方、家庭と仕事の両立に悩み始める時期でもある。物語が大きな展開をみせたのが７月なんです」 76話は注目度では１位だが、世帯視聴率は97位とけっして高くはない。 「朝ドラは放送期間が長いため、ＳＮＳなどの評判を確かめてから見始める視聴者も少なくありません。『虎に翼』は４月にスタートし、各メディアが質の高さを賞賛。その影響か６月に視聴率が上がるも、７月には脱落する視聴者が出始めたようです。逆にとらえると、７月以降も見続けた人は興味本位でなく同作にクギづけになったと考えられます」（安武氏） ランキングをみると、男女の注目度に差があることがわかる。例えば３位の29話（５月９日）は、男性の注目度は50位ながら女性は３位と高い。 「29話では、学生の寅子が高等試験に挑戦する姿が描かれています。月経が予定より早く来るなど、体調不良に悩まされながら見事合格。当時マイナーな立場にあった女子学生の苦闘が、女性視聴者をクギづけにしたのでしょう。寅子の劇的な成長に、男性はいま一つついていけなかったのかもしれません」（青柳氏） 逆に男性の注目度が高かったのが22位の66話（７月１日）だ。女性の注目度は85位ながら男性は１位だった。 「寅子が裁判官として、バリバリ働いている時期の話です。男性視聴者は『がんばっているな』と、若い女性を応援する心境になったのでしょう。一方で母親としての寅子が娘とすれ違い気味になり、子育てや家事がおざなりではないかという印象を受けるシーンもある。女性視聴者は身につまされ、現実から目を背けたい心境だったのかもしれません」（同前） 芸能リポーターの長谷川まさ子氏は、『虎に翼』の注目度の高さには主演・伊藤沙莉の演技力も影響しているとみる。 「これまでの朝ドラのヒロインは線が細い印象がありました。しかし伊藤さん演じる寅子は、どっしりして見る側に痛快なイメージを与えます。私の友人の弁護士は、作品内で東京地方裁判所として使われた名古屋市市政資料館に巡礼に行きました。プロも共感するほど、伊藤さんの演技力が素晴らしかったのでしょう」 朝ドラ史に名を刻んだ『虎に翼』。勝因は寅子の骨太の生き様なようだ。 『FRIDAY』2024年10月18・25日合併号より