Marketing Briefing[日本版]: 現実味を増しつつある TikTok 禁止法、米マーケターやエージェンシーの反応まとめ
3月13日にアメリカの下院でTikTok禁止法が採決され、米国内のマーケターやエージェンシーが動揺している。 今後、上院が承認すれば(成立には何カ月もかかる見通しだが)、米国内でTikTokを配信することもホストすることも違法となる。オーナーであるバイトダンス(ByteDance)がTikTokの株を売らないかぎり、1億7000万人に上る米国のユーザーは、同アプリを実質的に使えなくなってしまうのだ。 先週から今週にかけて、DIGIDAY[日本版]でもこの禁止法に関する記事がいくつも公開された。米国のマーケターやエージェンシーはこれについてどう思い、何を語ったのか。今週のMarketing Briefing[日本版]で、振り返ってみよう。
絶対にないとまでは言い切れない
ニュー・エンゲン(New Engen)でデジタルマーケティング担当バイスプレジデントを務めるケビン・グッドウィン氏は、「我々の視点から見ると、この禁止法は本物の脅威に思える。以前なら『とりあえず様子を見よう』だったが、さすがの我々も今回は違う。これがもたらす影響とその結果についての話し合いを始めつつある」と述べている。 また、あるメディアエージェンシーのシニアエグゼクティブは、「Twitterがイーロン・マスク氏に売却されたときを思い出す。取引後の最初の半年に多くのことが起こり、クライアントにかなりの混乱を引き起こした」と、一昨年ソーシャルメディア界隈を大いに賑わせた大事件を振り返った。 どうやら、米国のエージェンシーたちは、TikTok禁止法は無理筋ではあるものの、今回に限っては成立が絶対にないとまでは言い切れないと考えているようだ。
何十万もの米国の小規模なビジネスや職務に影響が出る可能性
化粧品ブランドのミラニコスメティスク(Milani Cosmetics)でCMOを務めるジェレミー・ローエンスタイン氏は、「TikTokの禁止についてのニュースは3年前くらいから聞いている気がする。常に話題にはしているが、実際に禁止されるかどうかはまったくわからない。自分でコントロールできないことについて心配するのは難しい」と語る。そのうえで、「マーケターにとって、さまざまなチャネルのすべての状況を把握しておくことは常に重要だと思う」と話し、TikTokの禁止の可能性に備えて方向転換し、柔軟な姿勢を維持するべきだとした。 インフルエンサーエージェンシーのポンテファーム(Ponte Firm)の創設者であるシャナ・デイビス・ロス氏も、「仮にこれらの新しい規制によってTikTokが消滅しても、オーディエンスは消えるわけではなく、ほかのコンテンツ消費の形式に移行するだけだ」と述べ、TikTokに依存しないスタンスを示している。 一方で、TikTokの有名インフルエンサーであり、美容ブランドのエクスペリメント(Experiment)の創設者でもあるリサ・グエーラ氏は、この禁止に対する最初の反応が「怒りと強い不満だった」と語った。「この国は多くの課題を克服しなければならないのに、連邦議会が合意できるのがTikTokの禁止だけだというのは酷い話だ。ましてや、このような規制は何十万もの米国の小規模なビジネスや職務に悪影響を及ぼすだろう」と、怒りをあらわにしている。 また、生理用品企業のオーガスト(August)の共同創業者であるナディア・オカモト氏は、「若い支持者を遠ざけてしまう悪い方法だ。つながり、教育、表現の自由に深い関心が寄せられているときにこのようにアプリを排除してしまうことは、完全な過ちだ」と述べている。 詳しい内容は以下の記事で TikTokへの予算投入を躊躇する広告主たち。禁止が実現すれば予算が「流出」する先は TikTok禁止に一部のブランドは激怒も、大半は別チャネルの準備を進め静観の構え