【Q&A】無呼吸症の医療器具が心配な方へ、疑問にお答えします
Q なぜこの問題は知られてこなかったの?
ヘルスケア産業の大手であるにもかかわらず、フィリップス・ジャパンは今回の問題で、ユーザーにきちんと説明をした形跡が見当たりません。ホームページに掲げられている説明は、2年前の自主回収開始当時の大まかな説明のままで、問題の詳細やその後の状況変化はまったくわかりません。 広報責任者の名前も電話番号も公表しておらず、メディアからの取材はメールでのみ受け付けて、本社玄関で「回答が届くのかどうか」を問うと「ご縁があれば」という返答でした。 一方で、米フィリップスや親会社ロイヤル・フィリップスのホームページを見ると、広報責任者の顔写真と電話番号を掲げ、少なくとも社会に窓を開いています。外部組織の協力を得て進めてきたという検証結果(英文)も2021年12月、2022年6月と12月、2023年5月とほぼ半年おきに発表し続けており、患者や医療関係者に説明しようという姿勢がうかがえます。日米で大きな情報格差が生まれている状況です。
Q 会社の説明が不十分でも、行政が対応してくれないの?
米国では、規制当局のFDAがこの製品の自主回収を最も危険度の高いクラスⅠと位置付けて重視し、米フィリップス本社に査察に入るなど、人々の「健康と安全」を最優先とする強い姿勢で臨んでいます。さらに患者の間で「回収されていると知らなかった」「情報提供が不十分だ」といった不満が高まっていると察知したFDAは昨年3月、同社に対して行政命令を出し、製品回収を進めている事実や健康被害のリスクについて、患者や医療関係者にきちんと知らせるよう強く求めました。 一方、日本では、自主回収の重要度を示す「クラス分類」が業者側の自主判断に任されている状況です。規制当局の厚生労働省や東京都が、FDAのような独自の調査や検証を行うこともありませんでした。行政の対応に、「本気度」の違いを感じます。 患者に対する情報提供についても、FDAはホームページで何度も情報を更新し、患者が取るべき対応や考慮すべきリスク、FDAの取り組みなどを詳しく説明し、最新情報を発信していますが、日本の規制当局は患者の立場にたった情報発信は何もしていません。 その理由を問うと、厚生労働省は「発信するかどうかはモノにもより、新型コロナワクチンに異物混入があったときには、その対応をホームページで発信した。フィリップスの件は、(日本では)クラスⅡとなったことの影響が大きい」(監視指導・麻薬対策課)、東京都は「自主回収の事案に行政が介入するわけにはいかないから」(薬事監視担当課長)と説明しています。 (つづく) 筆者:萩 一晶 フリーランス記者。1986年から全国紙記者として徳島、神戸、大阪社会部、東京外報部、オピニオン編集部などで働く。サンパウロとロサンゼルスにも駐在。2021年からフリー。単著に『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』(朝日新書)、共著に『海を渡る赤ちゃん』(朝日新聞社)など。情報提供は cpap2023j@gmail.com まで。
萩一晶