【Q&A】無呼吸症の医療器具が心配な方へ、疑問にお答えします
Q 「健康被害を受けた」と感じた場合、どこに届ければいい?
医療器具によって「健康被害を受けた」と患者が感じた場合、米国では有害事象報告(MDR)制度に基づいて規制当局のFDAに届け出ることができますが、日本にはそもそも患者が報告できるような公的な窓口がありません。 医薬品については2019年に厚生労働省の関連組織、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が「患者からの医薬品副作用報告」の受け付けを始め、安全対策に生かされていますが、医療器具については対象外となっているのです。
Q 問題が発覚したあと、フィリップス・ジャパンはどのような対策をとったの?
・防音材をシリコーンに取り替えた「改善品」との交換 ・最初からシリコーン素材を採用した新品との交換 ・同様の機能をもつ他の製品との交換 という三つの方法をとっています。ただし、国内で34万台ものCPAPの交換には時間がかかるため、それまでの「安全措置」として、同社は「微粒子の吸入を軽減するためのフィルターを提供する」と国や東京都に説明していました。吸い込むマスクの手前にフィルターをはさんで、0.3μm(マイクロメートル=ミクロン)以上の大きさの粒子状物質を濾し取ろうという方法です。 しかし、「フィルターは患者の1割程度にしか配らなかった」と話す代理店もあり、実際にどの程度の患者に配布されたかは不明で、同社はその詳細も明らかにしていません。
Q 回収がまだ終わっていないのはなぜ?
フィリップス・ジャパンは2021年7月に問題器具の回収を始め、2年たったいまも回収を続けています(※2023年9月の記事掲載当時)。国民皆保険制度がある日本では、CPAP装置は医師の処方により使用が認められ、健康保険制度の対象となっているため、同社は器具の出荷先についてはすべて把握しており、ユーザーと連絡を取るのにこれほど長い時間がかかるとは考えられません。同社は新しい防音材を海外から輸入して国内で交換修理しているので、作業に時間がかかっているのだと思われます。 また、この製品回収をクラスⅠ(重篤な健康被害や死亡の原因となり得る状況)と位置付けた米国と違って、日本ではクラスⅡ(重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況)に分類されたことで、「一時は騒然としかけたが、クラスⅡとなって落ち着いた」と話す医師もいます。製造販売元の自主判断をもとにクラスⅡに分類された結果、問題の「危険度」が低く受け止められた可能性も否定できないでしょう。