【Q&A】無呼吸症の医療器具が心配な方へ、疑問にお答えします
Q すべてのCPAPが問題なの?
問題が発覚し、回収されているのは米フィリップス製のCPAPだけです。フィリップスは親会社ロイヤル・フィリップス(本社・オランダ)のもと、米国や日本を含む世界各地で事業展開している多国籍企業。CPAPの分野でも、レスメド(本社・オーストラリア)と並ぶ世界有数のメーカーです。業界関係者によると、日本市場でもこの2社が大きな割合を占めています。 しかし、フィリップス製CPAPの自主回収が始まった2021年以降、「防音材の劣化」が判明して自主回収しているメーカーは、フィリップス以外にはありません。レスメドはフィリップスの問題を受け、「レスメドの製品は安全」とするCEOの声明をホームページに掲げ、「我々のチームが選んだポリエステル系ポリウレタンの素材は他の素材よりも水に強く、湿気の多い環境への耐久力がもっとある」と説明しています。
Q 日本の大手メーカーなら安心なの?
「私は帝人だから安心」「フクダ電子の器具だったら問題ないよね」といった声も方々から届きました。これは、間違いです。帝人とフクダ電子は日本の会社でCPAPを幅広く扱っていますが、CPAPの製造はしていません。あくまでも代理店で、扱っている器具は主にフィリップスやレスメドの製品です。
Q なぜフィリップスのCPAPだけが問題になっているの?
今回、問題が起きた箇所は「ポリエステル系ポリウレタン製の防音用発泡体」です。ウレタンフォーム工業会によると、ポリオールとポリイソシアネートという二つの化合物を反応させ、ウレタン結合を起こしてできるのがポリウレタン。その工程で発泡剤も加えると、通気性のある「軟質ポリウレタンフォーム」ができます。台所用スポンジや車の座席シート、マットレスなどに幅広く使われている素材で、CPAPの防音材もこれに当たると見られています。 「軟質ポリウレタンフォーム」は、原料のポリオールの違いによって種類があり、フィリップスやレスメドが採用したポリエステル系だと油に強く、機械的な強度も高いものの、水に弱くて加水分解しやすいのが欠点。ただ、素材メーカーは難燃剤や安定剤、充填剤など様々な添加物を加えて特定の用途に合わせた製品をつくっており、同じ「軟質ポリウレタンフォーム」でも品質が違うことはあり得るそうです。 「国産の製品なら簡単に劣化するとは考えにくい」と工業会。海外では安価な素材も流通しているといい、1社の製品にだけ問題が出た理由を解明するには、まずは当事者であるフィリップスが防音材の素材としてどこで、どんな添加物を加えて作った製品を採用したのかを明らかにする必要があるようです。