白浜“水難偽装”殺人事件 1審有罪の根拠を否定…それでも2審も有罪の理由とは 元裁判官は「殺害計画があったから有罪という結論先取りにはなっていないか」
【殺害計画と符合する溺死】 大阪高裁は、こうした背景を根拠に被告人が近い将来、交際相手と結婚することを望んでいて、新生活を始めるためにまとまった資金を準備する必要があったとし、「溺死に見せかけて殺害し保険金を得るという計画を思い立った」と指摘。 そして、「溺死による死亡は、その計画に完全に符合するもので、2人きりとなった約20分間に計画とは無関係に自殺や事故が偶然実現される可能性はおおよそ考え難い」と、自殺や事故の可能性を排斥し、1審同様に「殺意をもって、海中で何らかの方法により被害者の体を押させつけて溺水させた」として野田被告による殺害を認定したのだった。
■冤罪・誤審の研究をする弁護士「検索履歴等を有罪の証拠に用いることは慎重であるべき」
元刑事裁判官で冤罪・誤判の研究も行っている西愛礼弁護士は、「1審は「胃の中の砂」など医学的証拠だけから有罪を認めたが、各種医学的証拠から分かることが限られているため、そこまでの推認を認めなかった控訴審の判断は妥当」と総合的に判断した点を評価する。そのうえで、控訴審は「検索履歴」等の被告人の言動も総合的に考慮して有罪を認定しているが、「検索履歴」等を有罪の証拠に用いることには慎重でなければならないと警鐘を鳴らす。 【西愛礼弁護士】「検索履歴を有罪の証拠に用いるかどうかについては、検索の意図について多様な解釈があり得ることや、偶然発生した事故や自然死が他殺と間違えられてしまう危険から、基本的に慎重でなければならないものと考えられている。例えば、世の中には日々様々な理由で『殺人』などと検索している人がいるかもしれないが、ある日偶然にその人の周りで亡くなった人がいる場合、それらの人全てが容疑者になってしまう危険がある。また、『殺害計画』というストーリーの認定自体が有罪という結論の先取り(予断)になってしまっていないかという問題もある」 2審では、事故や自殺の可能性を否定できないとしながらも、検索履歴等の間接事実を積み重ねて有罪認定となった。判断の分かれ目はどこにあったのだろうかー 【西愛礼弁護士】「結局、判示のうち『計画とは無関係に、自殺や事故といった他殺以外の態様によって偶然に実現されたという可能性はおよそ考え難い』という点が、最終的な有罪判決への分岐点であったように思われる。その理由となったのが検索履歴、保険契約締結など被告人の言動に関する間接事実だった」 西弁護士は、1審での有罪の立証が崩れたものの、2審では総合的に判断する中で、検索履歴や保険契約などの被告人の言動が「殺害計画」として認められ、最終的には有罪の決め手になったと分析する。検索履歴を証拠に用いることについての問題を指摘しながら、「1審のように医学的根拠だけで判断しなかった点は妥当」と話していて、西弁護士の口ぶりからも、この事件に関する判断の難しさが感じられた。 1審とは判断理由は異なるものの、2審でも懲役19年の判決は変わらなかった。野田被告は、取材に対し「それでも僕はやっていないと言いたい」と話し、3月7日、弁護人が最高裁に上告した。 関西テレビ 司法担当記者 菊谷雅美
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