「ホラー業界の可能性が広がった」【ホラー作家・梨×株式会社闇・頓花聖太郎インタビュー】
頓花:良質なコンテンツ……たしかに、マネしたらできそうと思われてしまう弱点はあるんですよね。コンテンツとしてはすごく大事なことではあるのですが……!でも、いろんな人の「作ってみよう!」が、結果コンテンツが集まることになり、それがホラー業界の可能性をさらに伸ばすことにもなるので、割と楽しみではあります。 ーーいずれもホラーに縁遠かった人も巻き込んで盛り上がったということですが、当初から射程を広くしていた『行方不明展』は予想通りとして、ここまで大きく『つねにすでに』が話題になったきっかけはどこだったのでしょうか。 頓花:梨さんがギミックを仕込んでいるタイミングがいくつかありまして、例えば、連載の途中で突然サイトの記事が全部消えるとか、復活したら情報が戻っているとか、いきなり無関係と思われていたDiscordが舞台になって物語がはじまって、みんなで乗り込めるとか……。そういうギミックのところでわかりやすくバズっていたと思います。 一番起爆力が大きかったのは、Discord内で現れた怪異と直接対話できる状況だったと思います。これは株式会社闇が独自に作ったAIを活用したシステムで、ユーザーが怪異との対話を疑似体験できる時期がありました。 梨:ホラーのすごくいいところって、実験的なものを受け入れてくれる土壌だと思っているんです。ジャンプスケア(びっくり要素)的なホラーは苦手だけど、インターネット上で擬似体験できるホラーには興味を持っている層がいて、その人たちに対して体験型コンテンツとして理解してもらえて、巻き込めたのが大きかったと思っています。
■新しい読書体験を作り上げてくれる出版社が不可欠だった
ーー『行方不明展』も『つねにすでに』も、いずれも“リアルで体験すること”に大きな価値があったというところで、書籍化のハードルは高かった気がしています。そのうえで書籍化に踏み切った理由と、“リアルで体験すること”を超える、または同等の価値をつけるために意識した点などがあれば教えてください。
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