日銀が金融政策の維持決定、植田総裁のハト派的発言受けて円安加速
(ブルームバーグ): 日本銀行は19日の金融政策決定会合で、現行政策の維持を賛成多数で決めた。植田和男総裁の記者会見でのハト派的な発言を受けて、市場では早期の追加利上げ観測が後退し、円安が加速している。
会合では、無担保コール翌日物を0.25%程度に誘導する金融市場調節方針を据え置くことを賛成多数で決定した。政策金利の維持は9月と10月に続いて3会合連続。
植田総裁は会見で、利上げを見送った理由の一つとして、賃金と物価の好循環の強まりの確認には来年の春闘に向けたモメンタムなど「今後の賃金の動向についてもう少し情報が必要」と指摘。米国はじめ海外経済の先行きは引き続き不透明とし、「米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性が大きく、その影響を見極めて必要もある」とも述べた。
今回会合後に円安が進行したこともあり、植田総裁が来年1月の会合に向けて利上げを示唆するのではないかとの見方が強まっていた。総裁は1月会合までに入ってくるデータが日銀の見通しの確度を高めるのに十分かは「現時点では何とも言えない」と述べるにとどめ、追加利上げのタイミングは予断を持たずに判断していく姿勢を強調。市場の思惑が外れた格好だ。
UBS証券の足立正道チーフエコノミストは、「植田総裁の記者会見を見て、1月に利上げできると思うのはなかなか難しいというのが素直な印象」で、かなりハト派だと思ったと指摘。「為替がさらに円安になるかどうかが注目ポイント」だと述べた。
追加利上げの見送りを受けて、円相場は1ドル=155円台まで円安が進行。植田総裁の会見後には円売り・ドル買いがさらに強まり、一時157円台と7月以来の水準まで円安が進んだ。
総裁は「最近の経済・物価に関する各種の指標は、おおむね見通しに沿って推移している」との認識を示した。その上で、データがオントラック(想定通り)で数カ月推移していることを前提にすると「見通しが実現していく確度は多少なりとも上がっている」と指摘。時間の経過とともに、利上げのタイミングが近づいていることもにじませた。