どんな名作にも監督には著作権がない!? 再上映が話題「映画監督って何だ!」で200人の映画監督が訴えたこと
“前代未聞”の映画の中身
で、今回上映される「映画監督って何だ!」は、そのことを訴える作品らしいのだが、具体的に、どんな内容なのだろうか。 「日本映画監督協会所属の、200名前後の監督が、スタッフやキャストとして手弁当で集まった、前代未聞の映画です」(映画ジャーナリスト) 約90分の間に、パロディ時代劇、再現劇、インタビュー、演出実験など、さまざまな手法による場面が登場する。 「なかなか面白くできています。邦画ファンには、たまらない内容でしょう。冒頭、小栗康平、阪本 順治、故・若松孝二の“3大監督”が、著作権の現状を説明するパロディ時代劇で怪演します。正直、少々もたれます(笑)。しかし、そのあと、小泉今日子が〈歴史探偵〉となって登場し、戦前からいまにいたる、映画著作権の変遷を訪ねるタイム・トラベルになると、目が離せません。撮影時40歳ちょうどだった小泉今日子の、元気いっぱいの演技もとても楽しい」 まず小泉今日子は、1931(昭和6)年、内務省警保局の小林尋次(演じるのは山本晋也)に会い、戦前の「映画の著作権」について訊く。小林は「本来、映画の著作権は映画監督が取得する」と明言する。そして帝国議会では「ただし、完成と同時に映画会社に移転する」とされる。つまり、移転するとはいえ、一応、監督に著作権は認められていたのである。 「それが、なぜ、1970年の改正で、“監督から映画会社に移転”ではなく、最初から“映画会社に帰属する”とされたのか。その国会審議の過程が、迫力たっぷりに再現されます」 この国会審議のシーンは、よく見ると、石井岳龍(当時は「石井聰亙」)、故・恩地日出夫、故・大森一樹、神山征二郎といった錚々たる監督たちが、政治家や役人を演じており、なかなかの名演技を繰り広げている。 「要するにこのとき改正された主な理由は――映画は、あまりに多数のものが制作に関わっており、投資者も多数で多額になっている。著作権者が増えると、許諾確認だけで煩雑になり、二次使用などの円滑な流通が困難になる――とのことでしたが、果たして理由は、それだけなのか……このあたりは、ぜひ、映画で確認していただきたいです」 国会審議に、東宝の大プロデューサー、藤本真澄が参考人として登場するシーンは、見ものだ(演じるのは、映画監督で、現在、日本映画大学教授の緒方明。本人そっくり! )。 「藤本真澄は、こう弁じるのです――戦後、映画監督からは、戦犯逮捕者は一人も出なかった。いや、正確には、誰も名乗りをあげなかった。すべて、映画会社の幹部が(罪を)背負った――と。なにやら、映画会社が監督を守っているのだといわんばかりでした」