被災地では1週間以上、風呂に入れない…水道、電気、ガスが止まっても快適に過ごす「防災のプロ」の知恵
■下着の汚れ対策にはおりもの用シート お尻拭きシートだけでは、どうしてもデリケートゾーンはきれいにケアできない。辻さんがおすすめするのが、先ほど紹介した簡易シャワー水で陰部をきれいに洗う方法だ。女性の場合、生理中の汚れや不快感もペットボトルシャワーでケアできる。 ペットボトル+穴あきキャップは、必ず用意したいマストアイテムの一つだ。 また、見落としやすいのが下着の汚れだ。洗濯をこまめにできないために、下着の汚れをそのままにすると、感染症の発生につながる。辻さんが勧める下着の汚れ対策は、下着におりもの用シートを敷くだけ。下着をこまめに洗えなくても、シートを毎日取り換えるだけで、デリケートゾーンを清潔に保てる。女性だけでなく、男性にもおすすめだ。 ■避難所生活で一番怖いのは「口内乾燥」 水が使えないと、歯や口腔内のケアが後回しになりやすい。辻さんによると、能登半島の被災地では歯科医師会が歯ブラシを持って現地入りして歯磨き指導をしたが、歯磨きの習慣はうまく定着しなかったという。虫歯、歯周病、口臭のトラブルになっても、歯医者にはかかりにくい。辻さんが特に懸念するのは、口腔内の乾燥だ。 「口が乾くのが一番怖いことなんです。避難所では水もあまり飲めないですし、大勢の人がいる空間は空気が乾燥しやすいので、口が乾きやすくなります。そうなると、唾液が出なくなって口内に細菌が増え、風邪やインフルエンザ、さらには誤嚥性肺炎や気管支炎の感染につながる。 誤嚥性肺炎というと、高齢者の病気のように思うかもしれません。実は被災地では誰でもなる可能性があります。細菌を含んだ唾液などが、食道ではなく誤って気道に入り、肺に流れ込んで炎症を起こすのが誤嚥性肺炎です。若い世代は普段から咀嚼しないし、数回噛んで呑み込むので、口の筋肉が緩々で、災害時に肺炎になりやすいんです」 対策として、45分に1回、ペットボトルのキャップに水を注ぎ、キャップに口をつけずに舌の裏に流し込み、すぐに飲み込まずに10秒待つと唾液が分泌される、と辻さんは説明する。 また、チューインガムや飴は唾液を出す効果があるので、災害用歯磨きシートや口内洗浄液などと一緒に用意しておくのもおすすめとのことだ。